FILE:029 あかね色に染まる坂

評価:★★★(55)

TITLE

あかね色に染まる坂

(あかねいろにそまるさか)

DATA 2008年

 

◆あらすじ。

 市立アミティーエ学園に通う長瀬準一は、ある日男たちに絡まれている美少女を見つけ、助けようと男たちの間に割って入る。準一を見た男たちは【ジェノキラー】という言葉を残し、怯えて逃げて行くのであった。助けた少女に名前を尋ねられるが、見栄をはって颯爽とその場を立ち去る準一…。
 助けた少女に名前を名乗らなかったことを激しく後悔する準一だが、夏休みも終わり新学期が始まったばかりのクラスに一人の転校生がやってくる。転校生を見た準一は驚愕!なんと、昨日準一が助けた女の子 “片桐優姫” だったのだ!
 劇的な再会と、【ジェノキラー伝説】に新たな1ページを残した優姫と準一。これから甘くせつない関係が…。と思いきや、大変な出来事が二人を待ち受ける。

 

※引用元『あかね色に染まる坂』テレビ公式サイト

 

 

◆PC18禁ゲーム(つまりエロゲ)が原作。

 

全編を通して、シリアス、コメディ、サービス(お色気)のバランスが程よく、大きなストレスを感じることなく全話視聴できました。

 

原作であるゲームそのもののコンセプトが『ツンデレ系学園恋愛アドベンチャー』らしいのだが、アニメでは、そこまで言うほどのツンデレ感はあまり感じられませんでした。

 

第1話から全員がツンツンしていたら物語が進まないからなのだろうが、それゆえに好バランスを生んでいると言えるかもしれない。

 

しかし原作のゲームが好きで、その延長線から本作を観たりすると、キャラクター設定の差異などから、多少の戸惑いを感じる人も多いようだ。

 

アニシエはゲーム未プレイなので、とくに違和感なく視聴することができたわけだが、他のレビューサイトを覗いてみると「原作とぜんぜん違う」という声は少なからず上がっている。

 

情報量が多いゲームに比べ、アニメは限られた時間枠でひとつの物語を完結させなければならないという制約がある以上、ある程度の簡易化と歪曲化はまぬがれないわけだが、そこへさらに原作ゲームファンにも満足のいく物語にするというのは、やはり難しいことなのだろう。

 

ゲームでは無数にある攻略ルートをじっくり楽しむように作られているが、アニメではまず誰もが通る大筋のルートをなぞり、人気のあるルート(各キャラのエピソード)に触れ、さらにアニメ独自のオリジナリティも組み込む(これがマイナスに働くことが多々ある)となると、どうしても「ゲーム(原作)とは違うじゃないか」という声が上がってしまうのは仕方ないのかもしれないですね。

 

ゲームはゲーム、アニメはアニメと純粋に割り切って観ることができれば、原作ファンでも楽しめる要素はあると思います。

 

ゲームとアニメでヒロインの声が変わってしまうのは……まあ、このテの作品では仕様ですね(笑)。

 

内容としてはメインヒロインである片桐 優姫(かたぎり ゆうひ)が訳あって主人公である長瀬 準一(ながせ じゅんいち)の家で同居するというハーレムモノではよくある話である。ギャルゲー&エロゲーの定石として、とうぜん親はほとんど家に帰ってこない設定である。

 

そして、これもまた定番中の定番ではあるが準一を慕う妹・長瀬 湊(ながせ みなと)ともども、3人での共同生活がはじまるところから物語はスタートする。

 

恋愛アニメとしては王道的設定であるが、それゆえに安心して楽しめるという部分もある。

 

ツンデレ系と謳いながらも、妹の湊(みなと)は『ツン』が少なめである。どちらかといえば、主人公のすべてを知っている良き理解者といった存在である。

 

物語の中で血の繋がりがないようなことを仄めかしてはいるが、決定的なことは言わずじまいで終わっている。

 

とうぜんながら、優姫と湊のどちらと結ばれるのか? という具合に話が進んでいくわけだが、その結果はぜひ自分の目で確かめてもらいたい。

 

 

後述するが、『よくあるエロゲ原作のハーレムものをアニメ化した作品』というカテゴリーにおいては及第点の出来栄えだと思います。

 

◆定型文『よくあるエロゲ原作の~』について。

 

よくあるエロゲ原作のハーレムものをアニメ化した作品。

定型文である。

 

正直に言ってしまえば、この類のアニメ化作品は、ほとんどこの定型文で事が足りてしまう。

 

それぞれが(原作であるゲームでも)ブランドや作品ごとの特色を一生懸命考えて制作しているとは思うのだが、どうしたってユーザーが期待している要素を大きく外すことはできないし、もっと言えば(テレビ媒体の性質上)スポンサーから予算を捻出させるためにはターゲットとしているユーザー層におけるコンセンサス(=最大公約数)が得られる作品であることが望まれてしまう。

 

そうすると、どのような趣味趣向のユーザーでも購買意欲を煽ることができるモノにしなければいけないわけで、『妹』『幼馴染』『ニーソックス』『メガネ』『巨乳』『貧乳』……といった、個々のユーザーが観たいと思うものを余すところなく網羅していかなければならない。

 

大概の作品が似たり寄ったりになってしまうのは仕方がないだろう。

 

「もっとこう、オレの心にぐっとくる作品が欲しい!(メガネ好き)」
「もっとこう、オレの心にぐっとくる作品が欲しい!(妹好き)」

と、誰もが思っているのだから、そのすべてを網羅しようとすれば、とうぜん「それほどグッとくるわけではないが、まあ買って損はなかったな」という及第点のタイトルがズラリと並んでいってしまうわけだ。

 

しかしまあ、これはエロゲ原作に限った話ではなく、リアルロボットのアニメにしても、あるいはライトノベル原作のアニメであろうと(なろう系などはとくに)テイストが被ってしまうのは必然である。

 

かくいうアニシエだって浴びるようにロボットアニメを観ていたいわけだが、これだってまったく理解されない人から(例えば我が最愛の妻など)は、

 

「このまえ観ていたロボットとなにが違うのよ?」
と、ため息混じりに言われてしまうわけである。

 

 

意欲的な作品や、革新的な作品が、ときとして社会現象を引き起こすほどの影響力を発現することもあるし、それを期待して多種多様な作品を皆が視聴するわけだが、そのようなフロンティア・スピリッツとは別に、ひたすら自分の好きなジャンルの作品をいっぱい観ていたい、という安定感からくる精神的な充足(と癒やし)を求める視聴形態も、アニメ好きにはよくある傾向のひとつではないだろうか。

 

 

なので以前『Fortune Arterial』でも書いたが『よくあるエロゲ原作の~』という言葉は決して批判的な文言ではない。むしろエロゲ原作のアニメが好きな人であれば、その一言さえ書いてあれば安心して視聴できるというくらい確固たるサインポスト(=道しるべ)になりうるのである。

 

◆ちょっと歴史が気になって調べてみた。

 

2000年代初頭から、突然の大繁殖をはじめるエロゲ原作のアニメ作品群。

 

 

その一番はじめの作品はなんだろう?

 

 

生きていく上でまったく必要性のない疑問が脳裏をよぎり、少し調べてみました。

 

 

基本的に当サイトはアダルトに関する作品(つまり18禁のOVAなど)については記載しないことにしているので、今回調べた作品の定義というのは、

 

  1. 原作はあくまでも18禁ゲーム。
  2. それでも地上波で1クール以上放送されたもの。
  3. それ以前に販売されたOVA(18禁となっているもの)は含まない。

ということにします。

 

 

この条件に照らし合わせてみると、おそらく最初のエロゲ原作アニメというのは1999年に放送された『To Heart』と『下級生』という作品になると思います。

 

知っている人にはかなり懐かしいタイトルですね。

 

どちらのタイトルも原作であるゲームが爆発的な人気を集めたタイトルです。

 

後にコンシューマーゲームとして家庭用ゲーム機にも移植されているタイトルでもある。

 

放送当時は「ホントにエロゲーを地上波で流すのか!?」と驚く声もあったと思いますが、こうしてエロゲ原作からのアニメ化の成功(主にコンシューマ移植に対する宣伝効果として)から、最盛期には実に年間10本以上のエロゲ原作アニメが地上波の深夜枠を埋めていくことになった。

 

 

2019年現在ではピークを超えて、せいぜい年間に1本あるかないかという状態に落ち着いてはいるが、そもそも現在のエロゲーというものが最初からコンシューマ移植を念頭に置いて制作されているという部分もあり、ピークを超えて下火になってきたというよりは、移植とアニメ化が定常化してきたという方が正しいかもしれない。

 

ただし、アニメ化に当たってのハードルが相当上がってきているというのが現状ではないだろうか。

ざっくり調べただけでもすでに『よくあるエロゲ原作の~』という感じのタイトルが50本以上は存在しているわけで、どんなにこのジャンルが大好きな人で浴びるように観ていたいと言っても限度があるでしょう。

 

最近では本当に話題性のあるモノしかアニメ化されなくなりましたが、そのおかげで厳選されたこれらのアニメのクオリティというのはかなり高くなっていることは事実である。

 

 

エロゲ原作アニメも、これからの時代は量より質を求められる時代になってきているということですかね。

 

◆TV版の声優について。

 

どうしてエロゲーはアニメ化にともなって声優が変更されるのか?

 

 

誰しもが感じる疑問である。

 

 

原作ゲームの大ファンであり、そのキャラクター(声優含む)が地上波で、動画で観れるというのは、ファン心理として楽しみにしている方々がいることは想像に難くない。

 

 

『ドラえもん』や『ハンター✕ハンター』のように、ある日突然すべての配役がガラッと変わってしまうと、そこにはある種の驚愕と違和感がつきまとう

 

 

基本的に1クール放送で成り立っている深夜アニメであれば、その違和感を拭う暇も、気持ちを切り替えて順応する時間もないままに最終回となり終わってしまうだろう。

 

 

その理由を調べてみると、かなり大人の事情がもつれあっていて複雑怪奇であり、

一概に「●●だから■■なのである」

と言い切れる答えにたどり着けなかった。

 

そもそも、ゲーム制作スタッフとアニメ制作スタッフのメンツが違う。

 

そうなると、畑違いの声優さんではその実力も把握しづらく、アニメでよく馴染みのある声優を起用したくなるということはあるだろう。

 

彼らTVサイドの人間は原作のゲームを一からプレイして、ゲームそのものの世界観を理解するというほどの準備期間がない。上がってきたシナリオと、ゲーム内の設定資料などから推察してアニメを作っていくのだから、ゲーム内での『声』に執着がないのではないだろうか。

 

さらに、アダルト・ゲームと地上波放送という垣根は意外に高く、倫理上、未成年が声優を検索してアダルト・ゲーム(=原作)へ行き着いてしまうことを推奨できないという側面もある。

 

声優陣側からのNGもあるだろうし、監督なりプロデューサーなりが思い描く理想のキャストというものも存在する。

 

とまあ、事情を知れば知るほど「なぜ変わるのか?」という答えに明確な答えが存在しないことに気付かされる。しいて一言でいうならば、

 

 

作品ごとの諸事情によって変更される

 

のである。

 

 

というわけで、謎は謎のままとなってしまいましたが、気を取り直してアニメ版での気になる声優さんについて語っていこう。

 

まずはメインヒロインである片桐優姫を演じた釘宮理恵さん。少年役から美少女キャラまで演技の幅があり、独特のファン層を獲得している人気者である。今ではすっかり『銀魂』の神楽というイメージが強くなってしまいましたね。

 

神楽の、あれだけ下品な単語の羅列を淀むことなく繰り出していける釘宮さんの声優魂には脱帽します。

 

もうひとりのヒロインである長瀬湊役は平野綾さん。

他作品では活発な女性を演じることが多い平野さんの、ほっこりした癒やされボイスというのもけっこう貴重である。

 

そして主人公の友人である西野冬彦役はアスラン(石田彰)、そして母役には草薙素子(田中敦子)、教師にはフルメタクルーゾー中尉(小山力也)と、なんだか脇が豪華なラインナップとなっている。

 

◆深読み、疑問、総評。

 

全体的なバランスは(定番な物語であるがゆえに)とても整っているということは冒頭で述べた。

 

個人的に難点だと思うのは、全てのサブヒロインがメインヒロインの恋路を応援していて、さらにモテまくりの主人公を揺るぎない友情で応援している親友が存在しているということへの、若干の薄気味悪さがある、という点だ。

 

人としてのルサンチマン(=妬み、嫉み)が描かれていない恋愛物語というものは、観るものの想像力や視点を変えて考えてみると、かなり怖いものだということを感じた。

 

この異常な世界はリア充を通り越して、まるで『肯定』のみが存在を許されていて、そこではきっと何をしても結果的に許されてしまうという不自然な社会になってしまっている。

 

では、すべて肯定されている世界というものに、本物の『愛』というものが生じうるのか? 否定という概念が存在しない世界で、純粋に特定の男女が愛し合うということが有り得るのか……などと、あまりにも安定的に物語が進むもんだから、ついつい意識を変な方へ飛ばして深読みしてしまう。

 

 

もちろん、この作品にそんな深遠なメタファーが織り込まれているわけではない。

 

 

お気楽にニタニタして、サービスカットで悶々して、疑似ハーレム体験を味わいつつ、原作のゲーム(全年齢版)を買ってもらおうというのが最大の目的である。

 

そういう意味では、本作は非常によくできている。なぜならアニシエも思わずゲームをやってみたいと思えたからだ。

 

こっそり家でギャルゲーができる環境ではないので買いませんが(涙)。

 

独身だったら試しに買っているだろうな、と思える作品であったことは間違いない。

 

 

あとひとつ疑問に思ったところとしては、主人公の両親についてである。

 

両親による存在感がありすぎるアクション・シーンがちょいちょいサイドストーリー的に差し込まれてくるのだが、あまり(というかぜんぜん)物語の核心には関係なかった。

 

「監督がアクションやりたかったのかな?」と首を捻って観ていました。

 

全話視聴したあと、やっぱりまったく関係ないんだ……とがっかりしたことだけ記しておく。

 

クライマックスはモラルとの葛藤(なんて書くとどちらを選んだのかはバレますが)でもあるが、どっちつかずでなしくずしに『3人の関係はまだまだ変わらない、さあ今日もいつもの日常が戻ってきた……』というような逃げの結末にはしなかったところが評価できます。

 

モラル的にはアウトですかね? でもまあ血はつながってない(と思われる描写があった)ので、まあギリギリでグレーゾーンということにしておきましょう。

 

 

結論として、数あるエロゲ原作アニメの中にあってはオススメの一本たりうる作品です。

 

 

 

なんだか今回は内容と関係ない話のほうが多くなってしまいましたね……反省。

 

 


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