FILE:057 D.C.II 〜ダ・カーポ II〜

◆評価:★(15)

TITLE D.C.II 〜ダ・カーポ II〜
DATA 2007年
STORIES 全13話

 

◆あらすじ。

一年中、桜の花が咲いている初音島。

そこにある風見学園の通う桜内義之は、

学園長・芳乃さくらの家で暮らしながら、

学園ではクラスメイトとともに充実した日々を過ごしていた。

 

そんな中、ふとしたことから彼の甘く切ない恋物語が始まる。

家族のような存在である姉妹、朝倉音姫と朝倉由夢。

幼馴染みの月島小恋に、クラスメイトの雪村杏。

そして、学園のアイドル・白河ななかや、謎の少女・天枷美夏。

さまざまな少女たちが、義之の物語に花を添える。

 

いつまでも変わらない桜の木に見守られながら、彼の日常が少しずつ変わろうとしていた……。

※引用元『D.C.II 〜ダ・カーポII〜』アニメ公式サイトより。

◆観る順番飛ばしてます。

今回改めてレビューを書く上で、あれこれ調べてみて知ったことなんですが、ダ・カーポシリーズ視聴順番はちょっと複雑である。

 

実際、アニシエもさっそく第2期を飛ばして、3作目である本作を視聴してしまった。

 

というわけで備忘録的に、ダ・カーポシリーズの視聴順を下記に記しておく。

 

学園恋愛アニメをこよなく愛する向きの人で、ダ・カーポシリーズをまだ視聴していない人はご注意いただきたい。

 

アニシエの二の舞にはならないように。

1作目

D.C.~ダ・カーポ~

2作目 D.C.S.S. ~ダ・カーポ・セカンドシーズン~
3作目

D.C.Ⅱ ~ダ・カーポⅡ~

4作目 D.C.II S.S. 〜ダ・カーポII セカンドシーズン〜
5作目 D.C.Ⅲ ~ダ・カーポⅢ~

視聴順はこのようになる。先に言っておくと、アニシエはことごとくセカンドシーズンをすっ飛ばしているので、次に来るレビューは『D.C.Ⅲ ~ダ・カーポⅢ~』である。

 

いやー、うっかりしてましたねー。

 

気付いたときに、ちゃんと順番に全部視聴しようか迷ったのですが、本作の評価があまりにも低くなってしまっため、全部観るにしても、いずれ時間があるときでいいかな、という気分になってしまいました。

 

というわけで、すべてのシリーズ作品を網羅する日が来るかどうかは置いといて、本作のレビューへ移りましょう。

 

◆すべてがパワーダウン。

まずはざっくりと世界観を説明しておく。

 

前作『D.C. 〜ダ・カーポ〜』より53年後の初音島が舞台となっている。

 

前作で枯れたはずの『枯れない桜』が、なぜか本作中(数年前から)再び咲きはじめ、枯れない状況となっている。

 

端的に言ってしまえば、前作の登場人物たちの孫世代の話だということになる。

 

半世紀以上が経っているわけだが、文明的にはほとんど変わっていない。「いやいや、もうちょい変わるでしょ。いくらなんでも時代考証まじめにやってよ」とSF好きから突っ込まれるくらい、当時の現代と変わらない。

 

そんな中で、ロボット技術(どちらかというとアンドロイドだよね)だけが異常に発達しており、人間そっくりのロボットが登場する。

 

まあ、前作もいましたが。ロボット少女だけは格別である。

 

なぜなら、エロゲ原作のハーレムものだからである!(力説)。

 

欲望はテクノロジーの壁を容易に打ち砕くのである。

 

で、まあ、なにが「パワーダウン」なのかというと、世界設定そのものが蛇足になっているという、続編として本末転倒な状況になっていることが、面白さを欠いている決定的要因である。

 

簡単に箇条書すると、

  • 主人公の魔法(特殊技能)の必要性がない。
  • 枯れない桜の存在も必要がない。
  • 前作のキャストが登場している(不思議さに)意味がない。

ということになる。

 

この3つの要素が不要だということは、じつのところ、『ダ・カーポ』としての続編である理由すら希薄になっているということだ。

 

おそらく、原作のゲームではちゃんと続編である意味が(長いゲーム内のテキストのどこかかで)説明されているのだろう。

 

1クールの長さでは説明しきれなかったのか、あるいは色々と余計な部分の話を膨らましすぎて、必要な説明を入れる隙間がなくなってしまったのか、それは知る由もない。

 

そもそも、最終的にこの物語は恋愛物語ですらなくなっていくからである。

 

なんでそんなことになっちゃうのか? それをこれから解説していこう。

 

◆おかしいな。これハーレム系恋愛アニメだよね?

物語は主人公である義之(よしゆき)が幼馴染の小恋(ここ)に告白されるところからはじまる。

 

「よくあるエロゲ原作のアニメ」としては、意表を突くはじまりである。

 

しかし、最初から告白して恋人同士になるということは、(『日常系』でもない限り)その後に波乱が待っているという伏線でもある。

 

というわけで、当然ながら順風満帆にイチャコラな日々が待っているわけではなかった。

 

ここまでの話であれば、恋愛を主軸にした典型的な『恋愛』ものだと思わせてくれる。

 

あれこれとアクシデントやすれ違いがあるものの、最終的にはみんながハッピーな結末へと修練していくんだろう、とお決まりの安心感をもって視聴できる……はずだった。

 

安定の『恋愛ルート』から、奇妙奇天烈な『SFロボット倫理ルート』へと舵を切ったのは、義之がロボットである美夏(みなつ)を偶然起動させてしまったところからはじまる。

 

「偶然」とはいえ、アニメを作っている人たちにとっては偶然でもなんでもない「演出」や「構成」なのだから、この所業は確信犯的に「偶然にもロボットを起動させた」のである。

 

ここから徐々に義之は、小恋との恋愛よりも美夏の動向の方を気にかけていくため、恋愛比率は自ずと急低下していく。

 

そして義之と小恋は破局を迎えることになる。

 

まあ「恋人としての付き合いが浅いから」という理由はでっち上げられるけれども、それでも長年一緒にいた幼馴染との破局だというのに、義之は反省も自己嫌悪もほとんどしない。

 

それよりも美夏がロボットであることが社会的に問題になってくる。

 

なるほど。義之は最終的にロボットと恋愛を成就させるという、まさに『ダ・カーポ』らしい禁断の愛憎劇へ発展していくのだな! 

と、思って期待していると、そういう感じで進んでいかなかった(爆笑)。

 

『恋愛要素』はそっちのけで、物語の主軸は『ロボット倫理』や『ロボットの社会進出による悪影響について』といった社会的な問題へと移行していく。

 

あれ? これって「よくあるエロゲの……」じゃないの?

 

ハーレム要素はどこに? 

 

申し訳程度にはついてますが、なんか『ロボット談義』が多すぎて、その他の要素が薄味になっていきました。

 

 

◆君はロボット三原則を知っているか?

『恋愛』アニメのつもりで観ていたら、やたらとロボットに対して突っかかってくる登場人物(モブ含む)が増えていくのでここで少し基本を押さえておこう。

 

SF作家アイザック・アシモフの古典的名著『われはロボット』に記されている『ロボット工学三原則』というものをご存知だろうか。

第一条

ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条

ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条

ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

※アイザック・アシモフ著『われはロボット』より引用。

この条項はSF小説の設定として考案されたものであるが、現在研究されている本物のロボット工学においても反映されているという。

 

なんで急にこんな堅苦しい条文を引っ張り出してきたのかと言うと、古典でさえロボットを題材とするときには入念な世界設定を構築していくのに対して、本作の『ロボット談義』がじつに底の浅い話で終始するからである。

 

そもそも、どうしてそんなにロボットを毛嫌いしているのか、その理由も納得しづらい。

 

さらにいつの間にか周囲の反応が「ロボットの存在そのものを認めない」的な風潮になっているのに驚く。それまで、そんな設定を感じさせる描写などなにもなかったからだ。

 

ロボットに対する偏見や侮蔑の眼差し。単なる人間側の嫉妬や劣等感から差別されている社会というのは、SF好きな観点から見るとぞっとするほど恐ろしい。

 

なにが恐ろしいかと言うと、その恐ろしさは、「恐ろしさ」として演出したい意図があるわけではない、という恐ろしさなのである。

主人公・義之に負けず劣らず鈍感な演出である。

 

これが形を変えた無自覚な人種差別であるということが理解できない人が作っている、という怖さなのだ。

 

ナチス・ドイツのホロコースト(大量虐殺)は、もとを正せばユダヤ人の優秀さを妬んだ逆恨みに端を発している(という要素もある)。つまり、作中で行っている差別的表現が、これにそっくりなのである。

 

もちろん本作はそんなメタファーを盛り込んだ社会派なアニメではない。しかし、だからこそ軽率な演出の怖さがモロに表出している。

 

登場人物の中には、ちゃんとした理由でロボットを嫌っているキャラもいるが、けっきょくのところ、根本的な解決には至らずにこの騒動は終わっていく。

 

なんにせよ、『ロボットと人間の共生について』という大きな話は少なくとも『恋愛アニメ』でやることではないでしょう。

その証拠に、ロボット問題解決(根本的な問題は残ったまま)に尺を使いすぎて、最後の卒業式が大急ぎの薄ら寒い展開になっている。

 

背筋に鳥肌が立つ寒さ。これは前作の背徳的なゾクゾク感とはまったく別種のものである。

 

どんな鳥肌が立つのかは、興味のある方はぜひご自身で体験していただきたい。

 

◆ちょっとだけ声優について。

芳乃 さくら(よしの さくら)役の田村ゆかりさん。

安定の少女ボイスですね。見た目は変わらないけど、推定70歳くらいの美少女(美魔女?)の不思議な落ち着き感を見事に演じ分けています。

 

朝倉 純一(あさくら じゅんいち)役のチョーさん。

前作の主人公が祖父となって登場。芸達者な声優さんです。チョイ役なのが残念でした。

 

◆総評。

まずもって、評価が低い最大の理由は、

前作で培われた舞台設定のすべてが「必要ないレベル」まで活用されていないことが挙げられる。

 

だったらシリーズものじゃなくてよくね? 

と誰もが思うはずである。

 

さらに前作では「禁断の愛」を全面に押し出した王道的なシチュエーションであるのに対して、本作ではなんの緊迫感もない恋愛模様が淡白に流されていったことも、大きなマイナスである。

 

恋愛物語を装った出発点から、実は壮大なSFドラマでしたー、と視聴者を裏切ることについては、大きな問題はなにもない。

 

問題は、その裏切り方があまりにも面白くなかったという一点につきる。

 

前述したとおり、問題提議も問題解決にいたる経緯も、すべてが底の浅い展開である。

 

そうなってくると、主人公の神がかり的な鈍感さが、期待を裏切られたという残念さに、怒りにも似たイライラ感を添えてくれる。

 

特筆すべきは最後の卒業ライブにおいてである。

 

主人公は目の前で別れた恋人からギターを受け取ってもまだ「は?」「なにこれ?」と空気を読む力が保険適用レベルにまで達するほど、すっとぼけ続ける。

 

この主人公に共感できる人ってどれくらいいるんだろう? と余計なことを考えてしまう。

 

最後まで観た理由は主人公の生い立ち(税込みつまり姉妹とさくらとの関係性)を詳しく知りたかったためなのだが、それがほとんど説明されず「ゲームじゃないとわからない」という位置づけにとどまっている。

 

はっきり言わせてもらおう。

 

こんだけ時間を無駄にされて、さらにゲームを自腹で買ってプレイするわけがないだろ!

(※未プレイなのでゲームであればちゃんと説明されているかどうかは、保証の限りではない)

 

たとえば、ロボットである美夏に恋をして、小恋を含む人類そのものの反対を押し切ってタブーとしての愛を貫くというのであれば、前作の背徳感をさらにスケールアップしたゾクゾク感が得られたかもしれない。

 

じっさい原作ゲームでは(美夏攻略ルートが)そこまでシリアスなのかもしれないが、未プレイなのでなんとも言えない。

 

ロボットの権利を勝ち取るというのは素晴らしいことかもしれないが、それは別のジャンルの、別の作品でやったほうが大きなカタルシスを得られるはずである。

 

およそ原作が大好きで『ダ・カーポ』と名のつくものなら全部欲しいし、全部観たい!

 

という人以外にはおすすめできる作品ではありませんでした。

 

「よくあるエロゲ原作のアニメ化作品」とか『ハーレム要素』『恋愛アニメ』を期待している人は要注意である。

 


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◆ロボット対人間の戦いが気になる方はチェック!

 

『われはロボット』アイザック・アシモフ著

◆ロボットの苦悩を描いた名作。参考までにどうぞ。