FILE:064 MEZZO FORTE International Version

◆評価:★★★★(70)

TITLE

MEZZO FORTE International Version

(メゾフォルテ・インターナショナル・バージョン)

DATA 2004年
STORIES 80分

 

◆あらすじ。

現代より少し未来の東京。水素電池や人型ロボットが実用化された時代。そんな

技術の進歩とは裏腹に、犯罪検挙率は低下し、社会不安が増大する一方であった。

外見は現代の町並みと変わらないが、混沌の影に覆われた東京を舞台に、合法・

非合法を問わず、様々な危険な仕事を請け負う危険代行業を営む三人組がいた。

今回の依頼は、プロ野球のワンマンオーナー桃井桃吉の誘拐。仲間と共に計画を

実行しようとするが、裏の顔を持つ桃井の身辺には屈強なボディーガードがつい

ており、一筋縄では行かない。何とか誘拐に成功するものの、桃井桃吉は既に死

んでいたのだった。愕然とする仲間達。だが、父の死を知らない桃吉の娘桃美は

執拗にD.S.Aのメンバーを追い詰めていく…。

※引用元『MEZZO FORTE International Version-』公式サイトより。

◆経緯と概要。

まず最初に説明しておかなければならないこととして、本作はもともと18禁のアダルト・アニメとして発売された。

 

この最初の『MEZZO FORTE』は2000年に第1巻が発売され、翌2001年の第2巻が発売された。

 

『インターナショナル版』である本作は過激な性描写をカットして、さらに1本の作品として編集し直された作品である。エチィシーンはないものの、銃撃戦の描写などにはグロい部分もあり、それゆえにレーティングは『R-15』となっている。

 

『インターナショナル版』は海外向けなので声優は外国人で、英語を喋る仕様になっている。

それでは魅力半減なので、同梱収録されている『ディレクターズカット版』を視聴することを強く推奨する。

 

こちらは日本の豪華な声優さんによる、オリジナル音源である。

 

アニメ好きな日本人から見た場合『インターナショナル版』は、『ディレクターズカット版』を何度も視聴して、たまには気分を変えて外国人の声優さんで聞いてみようかな? という程度のオマケだと思ってもらえればよい。

 

本命はあくまで『ディレクターズカット版』であり、この記事のレビューもとうぜん『ディレクターズカット版』に準拠する。

 

実を言えばアニシエは18禁版であるオリジナルの『MEZZO FORTE』も持っているのだが、万人に紹介できる作品ではないし、このサイトのポリシーとしても残念ながら(アダルト作品になってしまうので)紹介できない。

 

しかしまあ、総評でも繰り返し書くと思いますが、ハッキリ言って18禁な部分はオマケであって、監督である梅津泰臣さんが表現の自由な場所を求めて行き着いた場所という以上の意味はないのである。

 

本作には(申し訳程度に)取ってつけたような性的シーンが描かれているが、全年齢用に対処するため、そのシーンをカットしても物語に不都合がないように組み上がっている。

 

これはつまり「せっかく18歳になったからエロアニメ買ったのに、エロがねえじゃねえか!」という当時の甘酸っぱいアニヲタからの苦情を考慮しての措置であり、梅津監督が描きたいことの本質ではなかったということが窺える部分ではないだろうか。

 

◆鬼才・梅津泰臣とは。

古参のアニメ好き『梅津泰臣(うめつやすおみ)』の名を知らぬ者はいないだろう。

 

一言でいえば「オープニング・エンディング・アニメーションの巨匠」である。

 

個人的にパッと思い浮かぶ作品としては『戦場のヴァルキュリア(後期OP)』、『終わりのセラフ(OP)』、『まおゆう魔王勇者(OP)』などなど。

 

そして何と言っても『機動戦士Zガンダム』のOPとEDを担当しているのである。何度観ても見飽きないクオリティはさすがである。

 

これらの作品に共通していることは「キャラクター(メカニック含む)の動きがとにかくカッコイイ」ということ。

 

カッコイイ動き方と、カッコイイ構図。そして主題歌に合わせたカット割りによる臨場感までも計算され尽くしたオープニンは、それだけで作品自体への期待値が上がります。

 

まさに作品の「顔」を作れる人物である、ということだ。

 

しかし、この類稀な才能のおかげで多数の悲劇も生まれている。

 

どういうことかと言うと「オープニングはカッコイイのに中身はつまらない」という作品が出てきてしまったのだ。

 

まさにパッケージ詐欺商法である。ガンプラ買ったのに、中身がガンガルだったら誰もが怒るだろう。本編とのあまりの落差に「オープニングだけ神」という評価を受けてしまう作品まで出てきてしまう。

 

これが梅津泰臣クオリティである。

 

どれがその作品なのかは、いずれその作品をレビューで引き当てたときに説明しよう。

 

梅津監督は生粋のアニメーターでもある。前述した作品はあくまでオープニングやエンディングのみを担当した場合のお気に入りであり、原画マンとして携わった仕事は膨大な数となる。

 

きっとアナタがお気に入りにしている作品のひとつやふたつは原画を担当しているはずなので、興味のある方はwikiで調べてみてください。

 

◆18禁であってもやりたかったこと。

2021年現在、誰もがある程度常識として認識している映像作品における年齢制限、つまりレーティング。この風潮はそもそも日本だけの機運というよりは、アメリカを中心とした諸外国とのすり合わせとして正式に定められていった。しかもけっこう最近の話である。

 

『一般映画制限付』が『R-15指定』に、『成人指定』が『R-18指定』に変更されたのは、1998年である。さらにこのとき新しく『PG-12指定』というレーティングも導入されました。

 

『PG-12』とは、簡単に言ってしまえば「保護者同伴であれば観れるが、12歳以下の子供だけでは視聴できない」というものである。

 

映画館であればこの規制もある程度の効力は発揮するものの、レンタルビデオやビデオゲームにおいては、あまり効力が感じられない規制であることも事実である。

 

このように、年齢制限という区分けがそもそも難しい線引きなのは周知の事実だが、とくに『R-15』と『R-18』の境界線については、当時はまだグレイな部分が色濃く残っていた。

 

たとえばセガサターンで微エロなギャルゲーがプレイできるくらいゆるい部分があった時代だったと思い出してもらえれば、当時の雰囲気はなんとなく理解していただけるだろう。

いただけないか? 

 

「え! 家庭用ゲーム機でエロゲーが!?」と、当時のアニシエには衝撃が走ったものなんですが……。

 

そんな時代にあって本作は、ややもすれば最初から『R-15』くらいのレーティングで制作できたんじゃないか? という疑問が浮かぶ。

 

しかしこの辺の事情は、はっきりしたことはわからない。

 

思うに、本作の前に制作された梅津泰臣監督作品である(これまた)アダルト・アニメ『A KITE』の好評価と、その自由度による制作のしやすさから、本作もアダルト作品というジャンルの中で作り始めたのではないだろうか。

 

対象年齢を広げることによって、自分が描きたい部分が削られるくらいなら、最初から大人しか観れなくてもいいから自由に作りたい。

 

さらに言えば、梅津作品を楽しむことができるのは小中学生の子供ではなく、大学生や社会人など、ある程度の分別がついている世代のはずである。

 

精神年齢が高ければ子供でも楽しめるかもしれないが、その描写の性質上、オススメできるものではないということも、梅津監督自身が確信してのことだろう。

 

では、梅津監督が『R-18』にしてまでやりたかったこととは、なんだろう?

それはおそらく「悪人だらけで正義の味方などいない、本当の意味でのリアルな世界」と、だからこそ必然的に描いていける「本物のアクション」ではないだろうか。

 

◆アクションこそ正義。

アニシエが本作で「素晴らしい!」と感じる部分は、もちろんその「アクションシーン」である。

 

それも作中の、すべてのアクションシーンが最高レベルで素晴らしいと思いました。

 

『アクション』アニメなんだから当然じゃないか。

と、思われる人もいるかもしれないが、残念ながら世の中には『アクション』とは名ばかりの、まったく動きがぎこちない(あるいはほとんど動かない)『アクション・アニメ』が掃いて捨てるほど存在しているのだ。

 

例えば、ガン・アクションひとつとってみても、互いに銃口を向けあって睨み合いながら数秒硬直。おもむろにどちらかが話し始めて、なにかで気が逸れたりしたときに合図したかのように撃ち合う……。なんてシーンはよく見かける(マヌケな)テンプレ的シーンである。

 

よっぽど互いの関係が近い(血縁者であったり、恋人や婚約者だったり)のならば、銃口を向けあったまま話す必要もあるかもしれない。

 

しかし、なんの因果関係もない職業的な殺し屋や傭兵同士の銃撃戦であっても、頻繁にこういった「睨み合い」からの「おしゃべりタイム」はテンプレート的な構成として存在している。

 

必然性のあるシーンならいいが、恐怖や焦燥感を煽るためだけにこの(逆効果と言える)手法を使うアニメ作品は、想像以上に多い。

 

そういう間の抜けた銃撃戦を観てしまうと、それまでどんなにクールな世界観やキャラクターだったとしても、一瞬で興が醒める。

 

きっと梅津監督も、そういう「もっさり」したアニメを観てきて(あるいはスタッフとして作ってきて)、思うところがあったのだと思います。

 

本作では、余計な待ち時間などいっさい存在しない。

 

構えたら相手にめがけてすかさず引き金を引く。先にやらなければ、やられるのはこちらなのだということが感じられる銃撃戦を観れるというのはけっこう貴重な体験である。

 

不自然な待ち時間がなくなったガン・アクションに、監督はさらに徹底したリアリズムを描きこんでいく。

 

たとえば撃たれた相手の描写。派手に吹き飛んだり転がったりせず、その場にへたり込むように死んでいくその死に様は、本当に銃で撃たれたらこうなるのかな、と思わせるほどリアリスティックに感じらる。

もちろん実際に銃で撃たれた人を間近で見たことがないからリアルさとして正解かどうかはわからないが、なんとなく「リアルっぽい」のである。

 

どれだけCGやキレイな映像を積み重ねてみても、本作のようなリアルさを追求したフィクションとしてのアニメの臨場感を醸し出すことは難しいだろう。

 

最先端の技術ではなく、監督自身のこだわりから抽出されたエッセンスだからこそ、この息を呑むような迫力を感じられるのではないだろうか。

 

ヒロインである鈴木 海空来(すずき みくら)が華麗に舞うカンフーアクションやガン・アクションは、それだけを目的に視聴してもいいくらいのハイ・クオリティであることは間違いない。

 

『アクション』ものにはちょっとうるさいぜ、俺は。

という目の肥えた人にも、絶対的におすすめできる作品である。かなり満足のいく一品のはずだ。

 

◆声優について。

もともとアダルトアニメだったにも関わらず、声優陣はかなり豪華である。

 

ヒロインである鈴木 海空来(すずき みくら)を担当した、こたにともこ(旧名:小谷朋子)さん。経歴的にはパッとしない(失礼)のですが、海空来の元気ハツラツなキャラクターにはぴったりの声質ですね。

もっと色々と出演しているのかと思いきや、それほど作品数は多くないようです。

いい声だと思うんですけどねえ。

 

さらに原田 智久(はらだ ともひさ)役の山崎たくみさん。マクロスプラスのイサム役で好きになった声優さん。

今回の役柄は、ファンキーな科学技術エンジニア。

いい声してます。

 

そして!

この作品最大の見所(聞きどころ?)なのが、黒川 健一(くろかわ けんいち)役を演じた故•広川太一郎さんである。

 

役柄、キャラデザがそもそも「広川太一郎」に似せてきている節があるのだが、それもそのはずで、梅津監督がどうしても一緒に仕事がしたい声優として広川さんを指名したそうである。

 

広川太一郎さんといえば独特のセリフ回し(広川節広川調などと言われている)が有名である。

 

「とかなんとか言っちゃたりして~」とか「いいんでないかい?」などというセリフを、アニシエと同年代の方なら、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか?

 

なにより広川さんが世間的に認知されたのは、実写映画である『キャノンボール』『Mr.BOO!(ミスター・ブー』シリーズでおなじみの(今の若者は知らないわなw)マイケル・ホイの声を担当したときくらいからだろう。

彼の演じるシーンのほとんどでアドリブを多数連発し、そしてそのアドリブは、たとえ口パクがまったくあっていなくても大笑いできるという不思議な楽しさを僕たちに提供してくれた。

 

口と声のタイミングが合っていなくても、それが逆に面白い。なんとも声優業の奥の深さを教えてくれた人物である。

 

アニメ業界のみならず、映像に携わる人であれば誰からも愛され、オファーが止むことはなかったという。

 

なので、広川太一郎という名前は(声優好きなら)誰でも知っているが、じつはアニメ作品での代表作というのは、意外に少ない。

 

本作のTV版として制作された『MEZZO』にも継続して黒川役を演じているので、このシリーズも代表作のひとつと呼べるくらい、アニメの代表作は少ないのだ。

 

『宇宙戦艦ヤマト』の古代進役も有名だけど、やはり主役として代表的なのは『名探偵ホームズ』ではないだろうか。

犬顔のキャラが可愛いヤツですね。覚えている人いますか? 宮崎駿監督も、この作品で何話分か監督していることでも有名です。

余談として『ルパン三世』のTV版パイロットフィルムに声を当てていたのも広川太一郎さんである。山田康雄さんのイメージが強いルパンですが、最初に担当したのは広川さんだったのである。

 

ホームズもルパンもこなせるというは、なんともすごい幅の広さです。

 

だいぶ話が脱線してしまいました。広川さんの話をしはじめると止まらないですね(笑)。

 

それくらい広川太一郎という声優は、(少なくともアニシエ的には)偉大だということである。なにより「声優」という職業の地位を底上げしたという意味でも、その功績はかなり大きいでしょう。

 

次に、悪役で登場した飯塚昭三さん。桃井組の総帥役でしたが、途中ですぐ死んでしまうのであまり活躍シーンは多くないです。

 

なに? 飯塚さんを知らない……だと?

 

『機動戦士ガンダム』のリュウ・ホセイ役と言えばお分かりただけるだろうか?

シブい声優ファンなら知っておくべき人であることは間違いない。

 

ということでシブい声優といえば、忘れてはいけない若本規夫さん。本作では黒幕としていい味出しています。

ということで、「え? これホントに18禁のビデオだったの?」というくらい豪華な声優陣を起用しています。

梅津監督の本気度がよく分かるキャスティングですね。

 

◆総評。

アクションシーンだけを評価すれば間違いなく『★★★★★』作品である。

 

ここまで徹底して無駄を削ぎ落として、なおかつガシガシ動くアニメーションはなかなか無い。そしてその動きをカッコよく演出している抜群のセンス。

 

『R-18』にしないと、ここまでのこだわりが描けなかったのだろうか? やっぱりそこが気になりますね。

 

この辺の事情について情報ある方がいたらぜひ教えていただきたい。

 

ひとつだけ、(あえて)難を言えば、テーマ性が極端に薄いという点は若干のマイナスポイントではあります。

 

これはまあ、アダルトというジャンルによる体質的な問題なのかもしれないし、あるいは「悪党同士で不毛な争いを続けているという、どうしようもない現実社会をリアルに(そして痛烈に比喩して)描く」ということに特化した結果だとみることもできる。

 

北野武監督の『アウトレイジ』シリーズにも通底する部分がある気がしますね。

 

そう思って振り返ってみると、映像的な演出手法については、基本的に実写映画のようなカット割りで作られているのかもしれないな、と書いていて思いました。

 

アニメも実写も関係ない、古き良き映像職人としての梅津監督ならではの観せ方なのかもしれません。

 

というわけで充実したアクションシーン、または広川太一郎さんの代表作として観たい人にはオススメです。

 

広川さんに思い入れが少ないであろう、昨今の若者のためにリストアップしておくと、

 

『ブラック・ラグーン』『カウボーイ・ビバップ』『ヨルムンガルド』あたりが好きな人には超絶オススメだというこです。

それではまた。

 


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