FILE:009 劇場版マクロスF 虚空歌姫 ~イツワリノウタヒメ~

評価:★★★★★(90)

TITLE

劇場版マクロスF 虚空歌姫 ~イツワリノウタヒメ~

(マクロス・エフ/イツワリノウタヒメ)

DATA 2009年

 

◆あらすじ。

変わらない日常、閉じこめられたガラス張りの移民船団。

西暦2059年、新天地を目指す銀河移民船団「マクロス・フロンティア」で、パイロットを目指す少年「早乙女アルト」は閉塞感を覚えていた。

そんな時、銀河頂点の歌姫「シェリル・ノーム」のコンサートツアーが船団へやってくる。シェリルに憧れる少女「ランカ・リー」とともに、アルトはコンサート会場にいた。

突如、重機甲生命体「バジュラ」の襲撃を受け燃え上がる船団。
少女たちを護るため、アルトは最新型可変戦闘機VF-25に乗り込む。
炎を切り裂き飛びゆく先には、宇宙を揺るがす伝説の ❝歌❞ と、少女たちにまつわる新たなる『謎』が…!

※引用元『 劇場版マクロスF虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~』公式サイト

 

◆14年ぶりの劇場版。

 

本作は劇場用のマクロスとしてはじつに14年ぶりの作品となる。

 

監督はミスター・マクロスこと河森正治。若干24歳にして『劇場版 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』を初監督として手がけてから、あらゆるロボットアニメ、SFアニメを手がけるヒットメーカーとなった巨匠である。

 

劇中曲を手がける菅野よう子もまた、『エヴァンゲリオン』『攻殻機動隊』といったビッグタイトルには欠かせない存在であり、その独特のメロディラインは一回聞いただけでもかなりの中毒性をもつ不思議なサウンドを見事に作り上げている。

 

◆TV版との違いについて。

 

当初、本作はTV版の総集編として企画されていて、新規に追加される映像についても、およそ全体の3割程度の予定であったらしい。

 

しかし、そこにミスター・マクロス(河森正治)が「すべてを詰め込むのは困難である」という意見をはさみ、ダブル・ヒロインのひとりであるシェリル・ノームの設定を大幅に変更

 

TV版とは異なる物語へと再構築することになった。

後編である『恋離飛翼~サヨナラノツバサ~』と併せて、まったくの別物語になっている。

 

ガンダム・シリーズでよく起こる「いったいどっちが正史なんだ?」という問題に対しては、河森監督みずからが「どちらが正史というわけではない」と断言している。

 

なので楽しみ方としては、まったく別次元の並行世界における可能性としての物語……として観るのが妥当である。

 

結果として新規作画が7割を超え、再撮影分は9割にも及び、アフレコにいたっては全編新録音という、もはや新作と言っても過言ではない作りとなって劇場公開となった。

 

別物語としての劇場版というスタンスは、なにも今にはじまったことではない。むしろ整合性を欠いた中途半端な総集編を流されるよりは遥かに視聴者としての楽しみも増えるというものだ。

 

TV版は、その長いスパンを有効に活用した重厚な物語を楽しむためのものであって欲しいし、劇場版には2時間弱という時間制限の中で、目一杯のエンターテイメントを楽しませてくれるものであってほしい。

 

なにより、ひとつの作品において2度楽しめるチャンスがあるというのなら、なんの文句があるだろう。

 

◆ダブル・ヒロインのパワーバランス。

 

ダブル・ヒロインであるシェリル・ノームとランカ・リー。

 

TV版とはストーリーの流れが違えども、二人の(主人公、早乙女アルトに対する恋愛的な)立ち位置はそれほど変わらない。

 

『イツワリノウタヒメ』における物語の主軸としてはランカが中心とはなっているが、

全編を通してのヒロインは、やはりどちらかといえばシェリル・ノームであろう。

 

圧巻なのはそのステージングである。

 

 

同シリーズである『マクロス・プラス』において、バーチャル・アイドルであるシャロン・アップルが行ったライブよりも、さらにグレードアップしているステージングは、マクロス・シリーズの時系列的にも、またアニメーションの技術の進化史としても必見である。

 

 

アニメであり、しかもSFロボットアニメーションであることすら忘れてしまうほど、随所に設けられたシェリルとランカの楽曲シーンは、それだけでひとつのミュージック・クリップとして成立するくらい完成度が高い映像美である。

 

◆総評。

前編としての見所。

上映時間の尺的な問題もあるが、TV版よりは主人公である早乙女アルトの決断力が高くなっているような気がする。

 

つまり、あまりうじうじと考えることをせず物語がスムーズに進む。

 

人間、そして男性として葛藤が少ないとも取れるのだが、本作のようなジェットコースター・ムービーでは、これくらいが丁度いいバランスのような気もする。

 

最初の30分位は、新規作画ではあるにせよTV版とストーリーはそれほど変わらない。

 

先にTV版を観ている人にとっては、徐々にストーリーが知っているものとは違う方向へ進んでいくワクワク感で楽しめるし、まったくマクロスを(概要くらいしか)知らない人にとっても充分に楽しめる作り方となっている。

 

なにより前編である本作だけでも、しっかりと話が完結しているのが高評価のポイントである。

 

話に区切りがついているにもかかわらず、続編である『サヨナラノツバサ』も観たくなるように意図して設計されている構成は、お見事! の一語に尽きる。

期待を裏切らない迫力の戦闘シーン。

そしてロボットアニメ・フリークであるアニシエが観てもらいたいのは、何にも増して目を見張る迫力の戦闘シーンである。

 

 

初見だけでは追いきれない各戦闘シーンは(好きな方なら)ぜひ何度も繰り返し視聴して、その緻密な描写力に痺れてほしいところです。

 

ということで、全体の総評は後編である『サヨナラノツバサ』にて。

 

 

 


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