FILE:014 化物語

評価:★★★★★(95)

TITLE 化物語(ばけものがたり)
DATA 2009年

 

◆あらすじ。

とある田舎町の男子高校生・阿良々木暦は、街に現れた瀕死の女吸血鬼を助けたことがきっかけで、吸血鬼もどきの人間となってしまう。女吸血鬼はその力を封じられたものの、「怪異の王」たる吸血鬼の出現はこの街の霊的エネルギーを乱し、様々な怪異の類が出没するようになる。暦はそうした怪異に憑かれた少女と出会い、彼女たちを助けるうちに人間的に成長していく。

※引用元「物語シリーズ Wikipedia」より

◆一味違う新基軸のアニメーション。

 

アニシエがはじめて本作に惹き付けられたキッカケは、TV番組(たしかNHK)で、『化物語』の映像手法について解説しているところを偶然見かけたからである。

 

元来、ロボットが出てこない作品については、ひたすら保守的であるアニシエではあるが、そこに映し出されている斬新なカット割りと構図の取り方に一目惚れして、さっそくDVDをレンタル。

 

そのまま『物語シリーズ』の虜となって全シリーズ買い揃えてしまうまでに至った。

 

ニュアンスの難しい部分ではあるが、けっして『新手法』という技術革新的な映像表現ではない。

 

それは、既存の手法をブラッシュアップし、独自のセンスを組み入れた『新基軸』であるというのが正しい表し方ではないだろうか。とにかく、その発想力が非常に素晴らしい作品である。

 

◆『怪異』をポップに描く。

 

主体となる作画は手書きに準じた手法である。

そこに(きちんと)効果を意識したCG描写を導入したり、実写を加工した映像を織り交ぜたりして、矢継ぎ早にカットが切り替わっていく。

 

実写を映し出すことにより、そこに幻想的な空間を作り出すという演出技巧には目を見張るものがある。思わず「なるほど、そういう使い方があるのか」と感心してしまうほどだ。

 

 

『エヴァンゲリオン』から確立した感のある、文字のみのカットも随所に差し込まれていくが、これにしてもキレイな明朝体で統一され、旧書体の美しさを強調し、印象的な映像表現に一役買っている。

 

 

『怪異』つまり、日本古来の『怪談話』をポップカルチャーのテイストで描くことに徹底している本作は、日本独自のドロドロ・じめじめした薄暗い世界の話を、むしろ美しく妖艶な世界観へと変貌させている。

 

怪異の本質は祟る神であり、日本の神とはそもそも気まぐれな災厄のようなもの。

 

物語の鍵を握る忍野メメが、ことあるごとに繰り返すこの種の言葉を受け、怪異を神格化するということをビジュアル的に表現する演出は、その目的を見事に実現しているという意味で申し分ないクオリティである。

 

また、本作では怪異について『言葉』あるいは『言霊』が重要視されることから、明朝体の映像化によって、その可視化にも心血を注いでいる。

 

 

◆『ドラマ』ではなく『劇」である。

 

全編通して、物語はほぼ会話劇(ダイアローグ)で進行する。

 

軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)という言葉がぴたりと当てはまるような、ハイテンポの会話の連続性は、聞いていて耳に心地よいほどである。

 

『四畳半神話大系』で紹介したような独白(モノローグ)とは違った台詞回しの面白さがあり、深いうんちくを話す場合でも、他愛のない罵り合いのような会話であっても、視聴者を飽きさせない工夫がなされている。

 

前述したポップカルチャーとしての映像表現と密接に絡まるようにして、長い会話を細かいカットの連続でつなぐことによって、視覚的にも理解できるよう計算された演出には、あとで気づいて驚かされた。

 

印象的なのが、主人公・阿良々木暦(あららぎこよみ)の『アホ毛』を象徴的に活用していることである。

 

 

ストーリーについても、明るいトーンの裏側に潜むヒロインたちの心の闇やトラウマを丁寧に描き出し、そこに怪異が取り憑く必然性をミステリアスに解き明かしていく構成は、視聴者をずっと引きつけるだけの力を最後まで保持していて、思わず時間を忘れて続けて観てしまう。

 

 

もうひとつ、特徴的なのが『反復』である。

セリフの反復に呼応して映像も微妙に変化しつつ繰り返されていくシーンがよくあるが、これが
ある種のトリップ状態をさそい、軽い催眠状態に近い気持ちよさが、この作品の中毒性のひとつになっているような気がする。

 

◆総評。

アニメにおける『演出』を学びたい人は観るべし。

作画も構成も最高峰のセンスが結集して作られていると言っても過言ではないだろう。

 

アニメの技術というものが、SFやロボットものだけではなく、こういった現実的描写においても、キチンと考えて作れば、ここまでの表現が可能なんだ、ということを鮮烈に突きつける作品である。

 

クセのある人物の、クセのある動きと、クセのあるカット割り。そしてクセのあるイメージカットの羅列。

 

それらが決して中途半端では終わらせず、最後まで徹底して描かれているところに、スタッフの心意気を感じた。

 

原作も全巻揃えているが、時間がなくてまだ未読状態である。いずれまとめて読もうと思っている。映像と比較した活字の演出という点で、とても興味深い作品である。

 

かっこよく、センスよく、笑えるほど面白い。

 

アニメーションにかかわらず、映像表現について、その可能性を勉強しているという人にも必見の一作だろう。

余談。

作中、漢字の横についている2桁~3桁の数字

これの正体を突き止めようと思ったのだが、思い当たる番号ではなかった。

 

JISコード、Uniコード、ワープロの漢字コード……どれも不発。

 

業界のコードだというウワサもあるのだが、わざわざ業界内でしか通じないコード表なんて面倒なものを作っているとも思えない。

 

謎である。

 

知っている人がいたら、ぜひ教えてください。

 

 

 


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