◆評価:★★(30)
TITLE |
京極夏彦 巷説百物語 (きょうごくなつひこ こうせつひゃくものがたり) |
DATA | 2003年 |
STORIES | 全13話 |
目次
◆あらすじ。
安泰が揺らぐ江戸末期、闇に葬られた事件の解決を請け負う不気味な三人組がいた。御行の又市、山猫廻しのおぎん、鳥寄せの長耳……「御行為奉」の言葉とともに、お上には裁けない罪人たちへの復習を妖怪のせいに仕立てて実行していく。そんな又市一行たちの”仕掛け”にひょんなことから巻き込まれてしまった考え物の作者・山岡百介は、彼らに惹かれながら深く関わっていくことになる。
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◆雰囲気は抜群に良い。
京極夏彦原作の怪奇小説『巷説百物語』のアニメ化作品。
舞台は江戸時代。簡単に言うと妖怪退治となっているのだが、その妖怪の本性とは人間の業や心の闇であり、それらを怪異に見立てて憑物落としの又市が事件を解決していくという昔ながらの時代劇を踏襲しつつ、愛憎渦巻く人間模様がさも妖怪のように演出している当たりは、さすが京極夏彦作品というところだろう。
そんなわけで、作中の色使い、デザイン、構図など、おどろおどろしい雰囲気をこれでもかと醸し出している作画は独特である。
ただ、それも少し過剰な部分がある。普通の人間(モブキャラ)が妖怪のような風貌をしていたり、紛らわしい描写が多いため、どいつが妖怪なのかわかりづらかったりする。
もっとも注意すべきは原作とは内容がかなり異なるということ。
だがアニメ作品としては、雰囲気がよく、ホラーや怪談と相性のよい演出や、テンポが早いため、意外にさくさく観れてしまいます。
グロいと言えばグロいので、耐性のない人は閲覧注意かもしれません。
◆声優について。
主要人物は豪華なラインナップ。
メインの進行役、というかほぼほぼ主役の御行の又市を演じた中尾隆聖さん。
フリーザ様やバイキンマンの印象が強いが、本作の又市は隠れたはまり役。めちゃくちゃカッコイイです。
役とぴったりマッチしていると言えば長耳役の若本規夫さん。この人はホントにどんな役でもハマってしまうという凄い人ですよね。いい味出しています。
そして最後は本作の主人公であり解説役の山岡百介を演じた関俊彦さん。
ガンダム的に言えばディオ・マクスウェルやラウ・ル・クルーゼですね。
クールな役から本作のような終始怯えているような純朴な青年まで、この人も幅広い演技に定評がありますね。
本作の魅力は何と言っても又市の江戸っ子調のセリフ回しでしょう。これだけで評価を上げてもいいほど痺れる格好よさがあります。
◆総評。
色々と良いエッセンスは持っているのですが、残念ながら評価はそれほど高くありません。
なぜか?
それは、原作とは似ても似つかないコンセプトで成り立っている作品だからです。
とはいえ、もともとアニシエもアニメで知った作品であり、その頃観ていた数話については(全話視聴はできなかった。その理由はこちらの記事で説明しています)、その独特の表現手法から面白さを感じ取れていました。
しかし、これは原作を読んだがために「まったくの別物」という思いが強まったせいかもしれません。
人の業は妖怪よりもおそろしい、というのが原作の根幹にあるテーマであるのに対して、
なぜかアニメだと後半に進んでいくに従って『幻魔大戦』のようなマジな異能バトルが繰り広げられていってしまうのだ。
なんだこれ?
と、原作を知っている人なら誰でも首を捻る展開。これはちょっといただけない。
京極夏彦の作品でアニメ化された『魍魎の匣』が原作に忠実であり、そしてかなりの良作であっただけに、今作のぶっ飛び感はちょっと視聴者(と京極ファン)を置いてけぼりにしちゃうほどの勢いでした。
又市たちの仕掛ける仕組みが、本当は種も仕掛けもある人の業であり、妖怪退治にしても「見立て」と「人の性」を絶妙に織り交ぜたメタファーであるということが原作の最も伝えたいテーマであるのに対して、アニメでは単なる疑似妖怪退治のレベルにまで落ち込んでしまっている。
まったく別物にしてしまうのなら、タイトルも変えてしまうべきでは?
と思えるほどの改変だったので、今回の評価となりました。
しかしまあ、原作を知らずに観れば、あるいは楽しめるのかもしれない。
放送当時のアニシエのように。
話は変わりますがOPテーマソング
ケイコ・リーさんによる「The Flame」は、
かなり素晴らしい楽曲です。下に試聴リンクを張っておくのちょっと聞いてみてください。
それでは、また別の記事でお会いしましょう。
<執筆者:アニシエ>
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原作『巷説百物語』
◆個人的にはやっぱりこっちの方が好きですねえ。
アニメ主題歌『The Flame』by ケイコ・リー
◆かなりオススメの楽曲です。