目次
◆時代と共に仕分けが困難に。
昔は非常に簡単だった。
『ガンダム』は『リアルロボット』であり、『マジンガーZ』は『スーパーロボット』である。
簡潔である。
何をもって『リアル』と定義するかといえば、
- 軍隊(あるいは類似した戦闘組織)で戦術・戦略的に使用される兵器であること。
- 量産されることを前提に作られている。あるいは産業構造を想起させる描写の有無。
- (たとえ異世界であっても)登場する世界設定の物理法則に乗っ取っている(かのように)限定された挙動であること。
- 合体・変形(その他の要因)により質量や形状、またはエネルギー構造が変化しないこと。
と、まあこれくらいの差異があれば、互いを分けて各人が好みに合うタイトルをチョイスする指標にもなる。
ロボットアニメが好きな方なら、そもそもどのへんに線引して作品をチョイスしているかは、おおよその共通認識でなんとなく理解しあえている。
『機動戦士Zガンダム』を『スーパーロボット』として観る人はいないだろうし、『マジンガーZ』を『リアルロボット』として視聴する人も少ないだろう。
だが、じつはどちらも100%その通りである、と言い切れない点もあり、その詳細は後述させてもらうことにする。
まずは、様々なロボットアニメについて「リアルさ」の検証をしてみようと思います。
◆『リアルロボット』のスーパー化。
昨今のロボットアニメは「リアル」と「スーパー」の境界を互いに越境するような設定が増えてきている。
代表格なのが『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァンゲリオンである。
そもそもロボットではなく人造人間であるという点ですでにカテゴリー分けが難しい話となっている。
しかしまあ、ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズにも参加しているので広義のロボットとして考えてみよう。
上記4項目でいうと1~3は当てはまる。いきなりなんの説明もなく自由に空を飛んだりすることもないし、電源は有線式という特殊な設定を盛り込んでいてリアルな兵器としての役割を担っている。量産を目的とされているし、じっさい量産機も登場した(※旧劇場版)。
しかし、話が進むにつれて4の質量に対する考え方に当てはまらない挙動をしはじめる。
相手の腕を引きちぎって、自分の腕として取り込むとか、相手のコアを食べて永久機関を手に入れるとか、もはや定義されているリアルからは離れて行ってしまう。
でも、やっぱりエヴァをカテゴライズするならば世界観や設定を含めた考証、人間の描き方などを総合的に判断すると『リアルロボット』に当てはまるとアニシエは考えています。
同じガイナックス作品であるが『天元突破グレンラガン』に登場するロボットの数々は『スーパーロボット』とみなしていいでしょう。
基本的にはワンオフのロボットであり、質量やらエネルギー源やら、そんなことは関係なく「気合と根性」で動いてしまうロボットなので、間違いなくスーパーロボットでカテゴライズしてよい作品である。
だが、こちらは後半になるにつれ『リアルロボット』の要素が濃くなっていく。
人物の描き方も緻密になっていき、量産型も登場してくる。
しかし、やはり最後は銀河レベルの大きさで戦うという破天荒な展開になるので、どれほどリアル設定が構築されていたとしても『スーパーロボット』と呼ぶのが相応しいだろう。
『フルメタル・パニック!』の主役機アーバレストも基本的にはリアルロボットだが、ラムダドライバという兵器が発動すると、物理法則を無視した超常的な能力を発揮する。
『交響詩篇エウレカセブン』のLFOと呼ばれるロボット群も、その世界でのエネルギーを利用しているという意味ではリアルであるが、主役機のニルヴァーシュが発動させる特殊能力は、とんでもなく神秘的な力である。
カテゴライズを困難にさせた極めつけが『リアルロボット』の定義となった『機動戦士ガンダム』の続編『機動戦士Ζガンダム』のΖガンダムである。
この機体は最後の決戦で仕様にないバリア機能や人の魂を受け入れて相手の動きを封じるというオカルティックな力を発揮させたりしている。
しかし、やっぱりZガンダムは『リアルロボット』なのである。
◆そして逆転現象が起きる。
不思議な話で、ここまで時代が進んでくると、逆にマジンガーZの方が『リアルロボット』としての基本を守っていたりする。
マジンガーZは光子力エネルギーという架空ながらも作中の世界内では確立されている科学的(=SF的)動力源を有しているし、空を飛べない弱点をオプションパーツで補完したりしている。
ブレストファイヤーもロケットパンチも光子力エネルギーが由来の兵器であり、パイロットや周囲の精神的な能力などに対してはまったく感応することなく機械的に動いている。
実は純然たるロボットとして、人の精神力に惑わされずに、わりとリアルに動いているのはマジンガーZなのである。
そして、このような逆転現象を無意識に認識しはじめた制作スタッフの中で、どっちつかずのロボットが好きではない人々の手により『ボトムズ』のスコープドッグ、『コードギアス』のナイトメアフレーム、『機動警察パトレイバー』のレイバーなど、絶対的に機械として動くことのみを追求したリアルロボットも数多く生まれてきた。
そもそも『リアルロボット』という単語を初めて使用したのも『ボトムズ』を監督した高橋良輔であると言われている。
あやしげな能力がまったくないという点では、『マクロス』のヴァルキリーも純然たるリアルロボットである。
しかし、人間というものは無いものねだりが好きなもので、どれだけリアルを欲していても、心のどこかでスーパーな(=超常な)能力によるカタルシスを望んでいたりするのである。
このような視聴者のわがままに、じつに的確にロボットアニメの進化は柔軟に対応してきている。
『リアルロボット』と『スーパーロボット』が戦う世界を緻密に描いた『アルドノア・ゼロ』は、ジャンルによるもどかしさをバランスよく統一させたという意味ではかなり衝撃的で革新的な作品となった(いずれレビューでちゃんと紹介します)。
◆結局どうすればいいのか。
突き詰めて考えていくと、「そもそも巨大ロボットが動くこと自体がリアルじゃないじゃん」という身もふたもない話になってしまうので、それだけは絶対に避けて話を結論づけていくと……。
やっぱりフィーリングで決めるしかないよね
という結論に達します。
高橋良輔監督作品であれば、ほぼ完全なる『リアルロボット』である。
『マクロス・シリーズ』も現在の所『リアルロボット』に準じている。
『ガンダム・シリーズ』については『スーパー』な部分が多々あれど、全体的には『リアルロボット』である。
……ようするにフィーリングです(ミもフタもない……)。
当サイトでは基本的に記事の最初で規定した4つの項目でチェックして振り分けます。
どちらか迷った場合は(やはりフィーリングで)「おそらくこの作品はコッチだろう」というアバウトなカテゴリー分けをしていきますが、作品それぞれに「いや、この作品は逆だろ」というものがありましたら遠慮なくご指摘ください(できれば理由も添えて)。
それから、あまりにも仕分けが困難な作品が登場してきたさいには、おそらく両方のカテゴリーに表示させていただくと思います。
どちらのジャンルが好きな人でもオススメできる、という配慮だと思っていただければ幸いです。
それでは、本日はこのへんで。
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