FILE:046 この素晴らしい世界に祝福を!

◆評価:★★★★(75)

TITLE この素晴らしい世界に祝福を!(このすばらしいせかいにしゅくふくを!)
DATA 2016年

 

◆あらすじ。

たまの外出で不慮(?)の事故に遭ってしまった引きこもりゲームオタクのカズマ。
目覚めたそこは、死後の世界だった。
アクアという口の悪い女神に情けない死に方を散々バカにされた挙句、
天国行きか、魔王軍に蹂躙され、過疎化の進む異世界に転生するかの選択を迫られる。
ゲーマーの勘に従い、選んだのはもちろん異世界転生!
そして、何かひとつだけ好きな物を持って行けるという異世界行きの特権として選んだ“もの”は、「じゃあ、あんた」。
こうして引きこもりゲームオタクと駄女神の異世界冒険が始まるのだった……!?

 

※引用元『この素晴らしい世界に祝福を!』アニメ公式サイト

 

<KADOKAWA anime>より

 

◆勢いのある『なろう系』

以前『リゼロ』のレビュー記事において『なろう系』についての概要を説明しているので、ここでは(そしてこれからは)割愛させていただく。

ご存知でない方は『リゼロ』の記事をご参照ください。

『なろう系』の勢いはかなり凄まじいものがあり、ウェブ小説から書籍化されることが珍しかった数年前に比べ、今では普通に本棚の一角が『なろう系』で専有されている書店も珍しくなくなった。

 

私見ではあるが、ライトノベル同様に玉石混交の、まさに戦国時代の様相を呈している。

 

大体において、似通ったタイトル(主に掲示板のスレタイ的タイトル)がついてる同種の作品は、その原型である作品を大幅に下回るか、大きく上回る作品のどちらかである。つまり当たり外れの差が相当大きい。

どれもが過不足なく面白い、というほど市場が成熟していない、というのが現在の状況だろう。

 

そんな『なろう系戦国時代』において、本作はお決まりの『異世界モノ』でありながら徹頭徹尾コメディに特化した作品である。

 

しかもそれがかなり面白い。

 

その反面、シリアスな展開がほとんどないので、真面目にファンタジーを楽しみたいという硬派な人にはちょっと嫌煙されてしまうかもしれない。

しかし、コメディ特化型のアニメなのに、なぜこれほどまでに人気を博しているかという点は非常に興味深い。

 

なにより、どちらかと言えば硬派なファンタジーが好きなアニシエですら思わずその面白さにのめり込んでしまったほどだ。

 

そんな自身の驚きともども、なぜ本作がこれほどまで魅力的に映るのか? その原因を因数分解してみたい。

 

 

◆面白さの仕組み。

本作(通称『このすば』)が元祖というわけではないが、まず最初のポイントは視聴者層への働きかけとして、とっつきやすい世界観を提示しているところにある。

 

 

それは『ファンタジー』が好きな者なら、誰しもが知っているであろうロールプレイングゲームのお約束的なルールが存在している世界。

たとえば、

 

  1. 自分のステータスが何らかの形で客観的な数値として確認できる。
  2. ギルドによる様々な依頼(=クエスト)をクリアして報酬を得るシステム。
  3. 職業による得手不得手が存在し、パーティを組んでクエストに望む。

などである。

 

馴染みのある世界観。それは『ドラクエ』『ファイナルファンタジー』、さらに遡れば『ウィザードリィ』などに共通しているゲームのルールと同じだということである。

 

見聞きして知っているというレベルを遥かに超えて、自分で体験している世界観だからこそ、そこには許容できる非現実としての現実感を生み出すことが可能になっているのである。

 

『なろう系』そもそもの傾向として、こうしたゲーム感覚と共通した部分を可視化できるような設定を含む異世界を舞台にする作品が多いが、それだけ読者層にとって受け入れやすい(つまり活字で表記したとしても映像的に想像しやすい)仕組みだということが言える。

 

このように理解しやすくデフォルメされたおかげで、能力や世界構造そのものについての説明が不要になり、すぐにキャラクターや物語の展開に集中できるようになっている。

 

次に、キャラクターの魅力について。

 

コメディ作品にとって最もアニシエが重要視しているのが各キャラクターの一貫性である。

ここがブレると、どんなに面白そうな作品でも途端に駄作となってしまう。

そこを踏まえて本作を視聴していると、

 

「ホントにそんな縛り(=設定)を作って大丈夫なのか?」

 

と、こちらが心配してしまうくらい極端なキャラ設定を行い、しかもそれを決して崩さずに物語を展開しているのに驚かされた。

 

主人公であるカズマは転生の際に、女神アクアからチートな能力かアイテムを授けると言われているのに、彼女の態度が気に入らないからと、嫌がらせのように女神アクアを指差して「じゃ、お前」と言い放ち、異世界へ強制的に女神を連れて行くことにしてしまう。

 

自分には(『運』のステータスは抜群に高いという天性のものはあるが)特別な能力がなく、しかも女神アクアの能力も人間レベルへと制限されてしまう(それでも上級職であるアークプリーストとしてかなりのステータスを持っているが)。さらに女神とアークプリーストの特性が相まって、アンデッドを無駄に引き寄せるという体質が発覚する。

 

仲間となるアークウィザードである、めぐみんは桁外れの攻撃力を誇る爆裂魔法を使えるが、その呪文ひとつしか覚えておらず、しかも1日に1回しか放つことができない。

 

同じく仲間となるクルセイダーのダクネスは、耐久力において最高クラスのステータスなのだが、剣戟がまったく当たらない。さらにドMな性格であり、攻撃を受ければ受けるほど興奮するという変態女騎士という設定である。

 

どのパーティからも仲間に入れてもらえないような欠陥だらけのキャラクターたちが集まり、様々な事件やクエストを解決していく。

 

それぞれの特徴や欠陥を活かした戦法を駆使して難問をクリアしていくのだが、作者が自らに課した制約を遵守しているからこそ、結末に得られる爽快感が増しているのだろう(※最終話では裏技的にめぐみんが爆裂魔法を2度使いますが)。

 

そして最後に、やはり重要なのはバランスである。

 

『このすば』では、物語が進行していくと同時に、主人公たちの状況が少しづつ変化していく。

最初は馬小屋で生活していた主人公たちが、やがて一軒家を持つようになり、ようやく人並みの生活を得たと思ったら、今度は借金にあえぐ状況(=第二期)となっていく。

 

日常系としての一進一退。ファンタジーとしての一難去ってまた一難。

 

それぞれのバランスが心地よく、テンポも良いので飽きずに視聴してしまう。

 

コメディとしての王道を行きながら、作者自身が設定した世界を崩さずに丁寧に物語を描いているからこそ、この絶妙なバランスを保った良作が生まれたのではないだろうか。

 

また、魔王討伐という最終目標が設定されているものの、いまだ初心者向けの町から出ていない。

なので物語の終着点がどこにあるのか、現時点ではまったく予想できない。

しばらく終わりそうもない物語というものは、コメディとして安定して視聴できる要素のひとつだろう。

 

しかしまあ、コメディだからこそ、ある日突然にラスボスの方からやってくるという展開もないわけではないだろうが。

 

 

◆ハーレム要素を逆手に取った構成。

ラノベ作品の(いまや)基本的設定ともいえる『ハーレム要素』であるが、本作はその要素を上手に利用して『アンチ・ハーレム』とでも呼べる状況を巧みに作り出している。

 

主人公カズマを取り巻く仲間たちは全員が女性である。

 

普通の展開であれば、女性メンバー全員がカズマに好意を寄せ、それぞれが牽制し合ったり抜け駆けしたりしてラブコメとしての要素を盛り上げるところであるが、本作ではそういった色恋沙汰がほとんどない。

カズマの欲望によるサービスシーンはあるが、それが即ち恋愛へと発展するような展開ではなく、大体がコメディとしてのオチの伏線で終わる。

恋愛的要素も重視したい人には、やや物足りない部分となるかもしれないが、それだけコメディに特化しているという意味では安心して大笑いできる作りとなっている。

 

◆声優について。

今回は珍しく女性声優をピックアップ。

シブイ声優はほとんど出てないからね。

メインヒロインであるアクアを演じる雨宮天(あまみやそら)さん。

優しい中に芯のある女性キャラクターを数多く演じています。

個人的に記憶している名演技は『アルドノア・ゼロ』のアセイラム姫ですかね。

アクアという破天荒な役柄を弾けるように演技しているのは、かなり驚きました。きっと楽しかったんでしょうね(笑)。

 

めぐみん役の高橋李依(たかはしりえ)さんは、同時期に放送していた『リゼロ』のヒロインであるエミリアも演じていました。
ファンタジー向きの声質というものがあるとしたら、まさに彼女がそうでしょう。

 

◆総評。これで泣けたら完璧。

とにかく、騙されたと思って一回観てもらいたい。

 

なぜなら、絶対に笑えるから。

 

欲を言えば、この面白さにプラス泣ける要素が含まれていたら、満点に近い点数になっただろう。

 

もちろん原作者である暁なつめ氏も、この作品で感動を伝えるつもりはまったくないだろう。ギャグに徹底した、こだわりのある作品の作り手として確かに素晴らしいものを持っている。

 

もしまったく違う作品を執筆する際には、楽しさはこのままで、ときにグッと涙腺が緩むような感動シーンも盛り込んでいる次回作を読んでみたい。

 

センスの良いギャグ作品を書ける作家であれば、決して不可能ではないと思うので、そんなファンの身勝手な願望を叶えてくれるような作品がアニメ化されたときは、そのときこそ★×5の評価にしたい。

 

というアニシエのわがままな期待値を込めて、本作のレビュー&評価とさせてください。

 

 


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