◆評価:★★★(55)
TITLE |
ARIA The ANIMATION(第1期) (アリア・ジ・アニメーション) |
DATA | 2005年 |
目次
◆あらすじ。
水の星「アクア」。
その観光都市ネオ・ヴェネツィアで、一人前のウンディーネになるため日々修業を重ねている水無灯里。そんな彼女の前に、ある日「ゴンドラに乗りたい」という女の子が現れます。
でも、灯里はまだ半人前の身、一人でお客さんは乗せられません。
しかし、お客ではなく「今から友達だから」と女の子は超強引。しぶしぶ灯里はゴンドラを漕ぎ出しますが、何故か女の子はつまらなそうな表情ばかり。
灯里は、大好きなアクアを少しでも好きになって欲しいと、女の子に語りかけるのですが…。
◆まったく知らなかった……。
なんと今年(というか去年?)、アニメ放送15周年を記念して劇場版が上映されることになったそうです。
タイムリーですね。狙ったかのような時期のレビューってちょっと恥ずかしいですね。
ランダムで選出して、順番通りに観ていただけなんですよ、ホントに。
(※詳しくは雑記の『ランダム視聴について』をご参照ください。)
劇場版のタイトルは『ARIA The CREPUSCOLO』(アリア・ザ・クレプスコーロ)。
せっかくなので最新作のトレイラーも貼っておきます。
◆古典的『日常系』なのに斬新な設定。
2021年現在、アニメのジャンルとして『日常系』はすでに立派に1ジャンルとして確立しているわけですが、本作が放送された15年前は、まだこれほどまでに大きなジャンルとしては育っていなかった。
なんとなくマンガの世界では『日常系』が出てきはじめけど、「これアニメでやっても絵は動かないし退屈だろうなぁ」という暗黙の了解のような空気があった。
しかし、よくよく考えてみれば『ちびまる子ちゃん』だって、大家の『サザエさん』だって、言ってみれば『日常系』じゃないか。
という古典の再発見と再解釈がはじまり、一大ジャンルとして台頭してきたのである。
古典の再定義こそルネサンスのはじまりである。
というわけで、2000年代初頭というのは、様々なジャンルのアニメが実験的に動き始める活気あふれた状況であった。
そんなアニメ業界のカンブリア紀、バージェス頁岩での多様性の大爆発とでもいうべき時期に放送された本作は、まずその第一印象からして『異色』であった。
アニシエも放送当時、なんとなく深夜(だったと思う)に観ていて「のんびりした物語だな……」と思って観なくなったことを覚えている。
当時は若く、刺激が欲しかったのだ(笑)。
今回改めて視聴してみて、さらにその設定を詳しく調べてみて驚いたのが、なんとこの作品は『未来を描いたSFファンタジー』だったということだ。
ちょっと風変わりな設定だけど、放送当時はこういった、ごちゃまぜ世界設定って、わりとメジャーだった……ですよね?
どれくらい未来かというと、資料(=wiki)では西暦2300年代とされている。テラフォーミングされた火星は、人類が居住可能な惑星となり、火星という名称も『アクア』へと変更されていた。
地球では海面がどんどん上昇し、海抜の低い地域から海に飲み込まれてしまっている。
そんな海水侵食で海の底へ沈む前に建築物をアクア(火星)へ移設して、町並みや文化・風習そのものを再現した観光都市ネオ・ヴェネツィア。
ここがヒロインたちの生活する場所となる。
というわけで、近未来的設定ではあるのだけど、町並みはイタリアのヴェネツィアであり、実在する観光資源(イベントや文化)が作中に盛り込まれている。
異星なのにヴェネツィアを再現した場所で、しかもその風習をちょっとアレンジするというスタイルは、現在の視点で考えると、ちょっと回りくどい印象を受ける。
なぜなら、物語の上でヒロインたちが住んでいる星が地球とは違うということを意識させる描写はないし、またその必要性もない。
必要のないものなら設定としてもいらないんじゃ……とも思うのだけど、やっぱりこの時代はこういう「見えない設定」がいろいろある作品が好まれていたという風潮もあるんではなかろうか。
なんとなくだけど、まだ先駆けだった『日常系』の物語をマンガで書こうとするならば、それなりに複雑な理由が必要な時代だったのかもしれない。
そして作者が練り上げたこの『ARIA』の世界観は、15年経った今でも映画化されるほどに斬新だったということに他ならない。
いつの時代も、パイオニアは独創的なのだ。
◆凝った設定でやりたかったこと。
作者である天野こずえさんが、ここまで設定を駆使してまでやりたかったこととはなんだろう?
それはおそらくヴェネツィアの名物であるゴンドラ漕ぎ(ゴンドリエーレ)を女性にやらせたかったのではないだろうか?
物語は惑星マンホーム(地球)からアクア(火星)へやってきた(ややこしいなw)少女、水無灯里(みずなしあかり)の視点をメインで描かれていく。
彼女はこのネオ・ヴェネツィアで一人前の水先案内人になることを目指して日々を過ごしていく。
アクア(火星)のネオ・ヴェネツィアでは、ゴンドラ漕ぎのことを『ウンディーネ』と呼んでいて、観光都市ネオ・ヴェネツィアの風物詩となっている。
灯里は同じように『ウンディーネ』を志すふたりの少女とともに、日々を過ごしていく。
物語そのものは『日常系』らしく、ネオ・ヴェネツィアの文化や季節ごとのイベントなどが描かれていく。
『ウンディーネ』にはランクがあり、最初のランクは「ペア」、次に半人前の「シングル」そして一人前の『ウンディーネ』として営業できる「プリマ」がある。
以下にランクと、その説明を記載しておきます。
【ペア】
見習い。ゴンドラに客を乗せることは許可されない。手の保護のために両手に手袋をはめる。ペアとは、この両手が手袋という状態のこと。
半人前。渡し船の運航と、指導員を乗船させての観光案内が許可される。
上達の証しとして手袋は片手のみになる。
一人前。通り名を与えられる。一人前の証として素手になる。
◆第1期は全体の紹介がメイン。
最初からシリーズ化が計画されていたようには思えないが、本作(第1期)では基本的に世界設定の説明としてのエピソードが続いていく。
上述したような、惑星そのものの話、ネオ・ヴェネツィアという都市の紹介、そして『ウンディーネ』とは何なのか? それに取り組む少女たちの視点を介して『ARIA』の世界をゆるやかに知っていくことになる。
『ウンディーネ』の「ペア」は基本的に所属する会社の先輩が面倒をみることになる。
灯里はアリシア。
灯里の友人でゴンドラ会社「姫屋」の跡取りである藍華(あいか)には晃(あきら)。
「姫屋」のライバル会社である「オレンジぷらねっと」のアリスにはアテナ。
それぞれのメンター(師匠、先輩)は3人揃って「水の三大妖精」と呼ばれるほどの実力者である。
ちなみに、この主要キャラの6名は、すべて名前が「あ」ではじまる。
別にそれが作中で重大な意味を持つことはないが、なんで全員「あ」からはじまるんでしょうね。
知っている人がいたら教えて下さい(他力本願)。
基本的に1話完結のエピソードが中心であり、物語の進行そのものは非常に緩やかであり、引っ張られるように次から次へと観たくなるというわけではない。
でも、しっかり1話ずつ丁寧に作られているのが、観ているうちに(たとえ、ながら視聴であっても)分かってきます。
そして「ヒーリングアニメーション」と銘打っているだけあって、BGMの癒やし効果が抜群である。
一度映像を楽しんだあとに、もう一度目を閉じてのんびり聞いてみることをオススメします。
◆総評。
端的に言ってしまえば、ちょっと昔の癒し系なアニメ。
異世界ファンタジーかと思いきや、未来の移民惑星が舞台のSFベースな物語である。
でもまあ、そんな設定はさておき、内容は女性のゴンドリエーレである『ウンディーネ』たちが「素敵」に出会う物語である。
放送当時に「いったいどの層に需要があるのだろうか?」と感じたのを覚えているが、改めて視聴してみると、まだまだ細分化が完全ではない頃の作品だからこそ、色々な層に観られていて、だからこそ根強い人気を得られているんじゃないか、という推論が成り立つ。
なんにせよ、一度観たことがあるのなら、むしろ声だけ聞いているくらいで、絵をほとんど観なくても癒やし効果が得られる貴重な作品である。
この先、2期、3期となってくると、それなりに物語が進んでいくのですが、おそらくファンになればなるほど、もっとゆっくり進んで欲しいと望んでしまうような作品ではないでしょうか。
3度のメシより日常系が好きな方。とにかく疲れきって癒やしを求めている方。
老若男女問わず、癒やしてくれる作品だと思います。
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