評価:★★★(55)
TITLE | ひだまりスケッチ×ハニカム |
DATA | 2012年 |
目次
◆あらすじ。
私立やまぶき高校の美術科に通うゆのは、学校のまん前にある小さなアパート「ひだまり荘」で、
同級生の宮子や、先輩のヒロと沙英、後輩の乃莉やなずなたちと、6人一緒に毎日を過ごす。
楽しいことも、おもしろいことも、びっくりするような出来事もあれば、
ちょっと落ち込むこともある、そんな当たり前で特別な日々のなかで、
ゆのは、優しく温かい仲間と共に、一歩ずつ夢に向かって進んでいく――――。
◆まず安堵。
前作までの公式サイトがまさかのネタ的あらすじだったので、
「ひょっとして本作もあらすじが一緒なのでは……」と危惧していたが、今回はちゃんと変わっていました。
良かった良かった。
今回はこれまでの『ひだまりスケッチ・シリーズ』とは違い、エピソードが時系列に沿って進んでいく。
これは、3年生であるヒロと沙英が卒業に向けて進んでいくことを丁寧に描くための措置だと思われる。
『サザエさん』方式のように、いつまでたっても歳をとらない世界ではなく、ちゃんと新入生も入ってくれば、3年生だって卒業する。
そういう当たり前の日常をきちんと描いている点は、本作がほのぼのとしている中に、現実的な息遣いを感じさせている要因なのだろう。
ちなみに、本作ではふたりの卒業までは描かれていない。
ヒロと沙英の卒業エピソードは、さらにOVAである『ひだまりスケッチ 沙英・ヒロ 卒業編』にて描かれることになっている。
なので彼女たちの行末については、今後のレビューで書いていくことになるので、あえてここでは言及しない。
◆いよいよ書くことがなくなってきた。
さすがに日常系のシリーズ物で4作目とものなると、
それほど書くことがない。
大きな変化というものが望まれていない作品において、ちょっとした心の機微や演出上のテクニックを針小棒大に紹介したところで意味がない。
シリーズを通しての感想は、1作目である『ひだまりスケッチ』のレビューを参照してください。
毎回言ってますが、レビューとしては1作目と大きく変わるところはありません。
それでも、本作ではささやかに揺れ動いていく少女たちの心の変化について、時間とともにゆっくりと成長していく過程を丁寧に追っていき、それを過度な演出を行うことなく描ききっている点は、評価をあげているポイントではあります。
ヒロと沙英の卒業を控えて、ヒロインであるゆのも、自分の将来や進路について思い悩むことが多くなっていく。
さらには、大人しい性格から一歩だけ前に進んでみようと奮起して文化祭の表紙絵に挑んでみたりもする。
だからといって物語の山場として大げさにこのエピソードを取り上げることをせず、淡々と描写することによってひとりの少女が思春期に感じる戸惑いや成長する姿を見事に表現している。
描いてみたり、途中でやめてみたり、でもやっぱり最後までやってみようと思い直してみたりと、その挑戦の仕方は、学生特有の緩やかさと、真面目さが交互にやってくる感情の波を思い出させてくれる。
「あー、こんな感じあったあった」と思える、ひたむきさと面倒くささの波状攻撃。
学生時代を振り返ってみれば、誰しも感じられるノスタルジックな情景である。
◆映像演出とネタをひとつ。
起伏の少ない日常系なので、紹介するほどのエピソードはあまりない。
そういう意味では視聴者を選ぶ作品だとも言える。
つまり1作目である『ひだまりスケッチ』を視聴してみて、そこに面白さを見いだせなければ、その後のシリーズを観る必要がないということになるわけだ。
あとは、どれだけ細部のネタに面白さを発見できるかということになるわけだが、ひとつの例として第8話に含まれているネタをひとつ紹介しておこう。
ゆのたちが通う学校の文化祭(やまぶき祭)のエピソードが描かれているのだが、廊下の張り紙に開催中の禁止事項が貼られている。
その内容は、
- 許可なくゲリラライブを行ってはならない。
- 校長の像をへし折ってはいけない。
- 過激な衣装でサンバを踊ってはいけない。
の3点である。
シリーズを通して視聴している人にとっては、この張り紙が誰に向けて発せられているかはすぐに検討がつく。
コスプレ大好きな美術教師である吉野屋先生に対する警告なのである。
学生へ向けられたものではなく、こういったイベントでは間違いなく一番羽目を外すのが先生であり、すでに教師(校長含む)や生徒会などにマークされているのが読み取れる面白い隠しネタである。
ちなみに、その後にちゃんと(?)吉野屋先生は校長に捕まって引きずられているシーンが入ってくる。
この張り紙を発見してもしなくても成立するように作られているのが、本作の丁寧な作り込みの特徴であると言っていいだろう。
映像的な演出については、前作までのストーリー重視から、ふたたび抽象的なカットイン画像が多用されるスタイルへとバランスがシフトしている。
そのおかげで単調な時間経過などの映像表現がテンポよく進んでいき、観ているときに退屈するような間延びした感覚がないので、すらすらと気持ちよく視聴できます。
「卒業」というテーマを扱う作品では多かれ少なかれメランコリックな雰囲気が漂うものだが、そこを感傷のみで描くことをせず、『日常系』『コメディ』路線を崩さないよう配分されている映像とストーリーは、かなり高等なテクニックであると言えるだろう。
◆オープニング曲・エンディング曲のススメ。
テレビ放映シリーズとしては(2019年現在)、本作以降の続編がないので、ここでファンに好評だった全シリーズのオープニングとエンディングの楽曲を紹介しておこう。
シリーズ通して一貫したスタイルのようなものが存在しており、オープニングテーマは「元気が出る」イメージであり、エンディングテーマは「爽やかさ」「爽快感」が重視されている。
オープニング、エンディングともに、アニシエのイチオシも記載しておくので、興味のある方は視聴してみてください。
※AppleMusicの視聴機能を利用しています。クリックすると視聴ページへジャンプします。
【オープニングテーマ】
第1期『ひだまりスケッチ』OP
第2期『ひだまりスケッチ×365』OP
第3期『ひだまりスケッチ×☆☆☆』OP
第4期『ひだまりスケッチ×ハニカム』OP
※どの曲もテンションが上がる元気系で甲乙つけがたいのですが、もっとも勢いを感じるのは第2期の主題歌『?でわっしょい』でしょう。途中で曲調が変わる部分が良い感じです。憂うつな気分を吹き飛ばしてくれる元気な曲なのでイチオシ!
【エンディングテーマ】
第1期『ひだまりスケッチ』ED
第2期『ひだまりスケッチ×365』ED
第3期『ひだまりスケッチ×☆☆☆』ED
第4期『ひだまりスケッチ×ハニカム』ED
※エンディングも迷ってしまうほどの神曲ばかりですが、爽快感あふれる第1期の『芽生えドライブ』がイチオシですね。
どの曲も映像と一緒に楽しむほうが、より味わい深いのは言うまでもないんですがね。
◆総評。やはり1期を参照してください。
おそらく、本作(第4期)まで視聴している方には説明は不要でしょう。
ゆのたちが繰り広げる、微笑ましい学園&寮生活の日常を楽しく視聴できている人に対して、4期目だから特別に総評が変わるということもありません。
シリーズ全体の総評を知りたい方は当レビュー『ひだまりスケッチ』(第1期)を参照してください。
テレビ放映シリーズとしては、本作がいまのところ最新作です。
OVAに『卒業編』がありますが、原作にある更にその後の物語は、はたしてテレビで観られる日が来るのでしょうか?
できれば原作ラストまで作ってもらいたいですね。
アニメをたくさん観たい! そんなアナタににオススメの動画配信サービスとは?
記事内関連商品のご案内。
『ひだまりスケッチ×ハニカム』Blu-ray Disc Box
◆ここまで視聴していたらクセというより病みつきです。美麗なBlue-rayを保存用に。
原作コミック『ひだまりスケッチ』全巻セット。
◆ヒロ・沙英の卒業、その後のエピソードまで。気になる方はこちらをチェック!