FILE:015 フルメタル・パニック!

評価:★★★★(75)

TITLE フルメタル・パニック!
DATA 2002年

 

◆あらすじ。

  世界最強といわれる特殊部隊「ミスリル」に所属する戦士、相良宗介。彼は日本の高校に通う美少女「千鳥かなめ」を守るため、彼女の高校に転校生としてやって来る。そこで巻き起こる一人戦争状態。一方で、「千鳥かなめ」をめぐって暗躍する組織。学園ラブコメ、軍事サスペンスの両方を持ち合わせたSF冒険活劇、ここに参上!

※引用元『TDD-1.COM フルメタル・パニック』公式サイト

 

◆シリーズ第一弾。ミスマッチが生んだ名作。

 

もしも『学園ラブコメ』の世界に『戦争映画の主人公がやってきたら……』という発想から生まれた作品。

『学園』と『戦場』

『恋愛』と『アクション』

『コメディ』と『サスペンス・アクション』

 

相反する要素を見事に融合させた本作は見応え充分のアニメ作品となっている。

 

古今東西、あらゆるメディアでミスマッチによる面白さを追求している作品は多々あるが、そのバランスが程よく絡み合っている作品というのは、けっこう少ない。

 

ハードなアクションに特化したり、徹底したギャグ作品としての名作は数えきれないほど存在しているのだが、この作品ほどミスマッチを丁寧に描いて成功している作品は珍しいだろう。

 

悪く言うと、それぞれに物足りない味付けが多少はあったりもするのだが、全体としてのクオリティで考えれば(ボリュームも含めて)かなり上質な仕上がりであると言える。

 

◆欲張りなアニメ好きには最適。

 

『ウィスパード』と呼ばれている者たちがいる。

 

彼ら(あるいは彼女たち)は、生まれながらにして人知を超えたブラックテクノロジーを無意識下に眠らせて、そうとは知らずに日々の生活を営んでいる。

 

そのブラックテクノロジーがどこからくるのか? その詳しい説明は物語の中では語られない。

 

しかし、確実に『ウィスパード』から提供される高度な知識の恩恵により、世界の軍事技術は、時代を超越したハイテクノロジーを手に入れることができた。

 

そんな『ウィスパード』を確保する動きが秘密裏にうごめきだした時代。

 

ブラックテクノロジーを独占しようとする謎の組織『アマルガム』

 

『ウィスパード』の保護と、その技術力でもって世界の紛争を収めようとする特殊傭兵組織『ミスリル』

 

2つの勢力の間で、ミスリルの傭兵である相良宗介(さがらそうすけ)はウィスパードである千鳥かなめを護衛する任務につく。

 

 

彼女は自分の特異な能力について何も知らない。

 

宗介の任務は、彼女の日常を守りつつ、迫り来る驚異から彼女にも気付かれないように守り抜くことである。

 

 

だが、『バカ』がつくほど生真面目な性格の宗介は、そこが平和ボケした日本であることもお構いなしに銃を手にして彼女の周囲をうろつきまわる。

 

要人警護において、当の本人がまったく危機意識がないところへ、さらに全方位での気配りを余儀なくされる宗介は、そのオーバーワークから、いつも暴走気味に失敗の連続を繰り返す。

 

やがて、ただの変人だと思っていた相良宗介が、本当に自分を守るためにやってきた傭兵だということに気づく千鳥かなめ。

 

しかし、だからといって宗介の暴走気味の護衛を日常に持ち込むことは絶対にさせない。

 

この、日常と危険に満ちた世界の対比を、コメディタッチで描く部分とシリアスな展開で進むシーンのバランスが良い。

 

平和な日本では失敗ばかりする宗介は、はたから見れば喜劇役者のようにコミカルである。

 

なぜ彼がコミカルに映るかと言うと、宗介自身はとてもマジメに護衛任務を遂行しようとしている結果、空回りしているからである。

 

そんな宗介が、いざ事件が勃発するやいなやプロフェッショナルな傭兵として、本来の実力を発揮する。

 

どちらのシーンにおいても、相良宗介というキャラクターに一貫性があるからこそ、シリアスな展開では、その寡黙さがカッコよさを際立たせている。

 

こうして日常系ラブコメも、SFサスペンス・アクションも、見事に両立させている。

 

ラブコメだけでは物足りない。アクションだけでは癒やされない。

そんなワガママなアニメ好きを満足させる欲張りアニメでもある。

 

◆日本人にマッチした構成。

 

本作の面白さについて、その構成自体を因数分解して分析してみると、そこには日本古来の演出技法が盛り込まれている。

 

江戸時代、能楽・歌舞伎が隆盛を極めていた時代から連なる演出であるが、簡単に言ってしまえば、それまでまったく良い所のなかった主人公が、満を持して大活躍(大立ち回り)をするという時代劇にみられる(よくある)展開である。

 

余談だが、作中においても、千鳥かなめが架空の不思議な時代劇に熱中している描写がある。

 

『序破急(じょはきゅう)』という、伝統芸能独自の『起承転結』の演出法があるが、まさしく『破』から『急』へと移行する「よっ! 待ってました!」的な決めのシーンが各エピソードごとにキッカリと用意されていて、視聴後は胸のすくような後味のよい満足感を得られるように作り込まれている。

 

 

また、随所に『戦争映画』や『スパイ映画』のオマージュ(というかパロディ)的な要素が挟み込まれていて、そういったジャンルが好きな人には思わずニヤリとしてしまう部分もある。

 

たとえば、次回予告のBGMが『特攻野郎Aチーム』によせて作られているのは、知っている人には思わずニヤけてしまう演出である。

 

これは単に、ジャンル的に同種の人が観るだろう、ということを計算して挿入されているオマケのようなものである。本編がそれによって理解できなくなる、ということはないのでご安心を。

 

 

◆俊逸のメカニック・デザイン

 

キャラクター劇としての面白はさることながら、本作で(アニシエ的に)一番の見所はなんといってもロボットアクションである。

 

当たり前である。

 

カッコイイロボットが出るから観ているのだ!(力説)

 

舞台は1990年代後半から2000年代初頭、そこにブラックテクノロジーが流入した架空の現実世界という設定である。

 

ソ連は崩壊せずそのまま残り、米国との冷戦が密やかに続いている。

 

各国の軍事バランスは微妙に崩れはじめていて、ブラックテクノロジーにより作り上げられた次世代戦闘兵器である『アームスレイブ』と呼ばれるロボットたちに、その主役を明け渡していこうとしている時代である。

 

実在する戦車や戦闘ヘリに混じって、巨大な人型兵器が台頭してきている、という異常な世界を描いている本作は、ガンダムとはまた違った意味での『リアルロボット』の路線を歩んでいる。

 

個人的には『装甲騎兵ボトムズ』の系譜であると認識しているが、そこに超然とした謎のテクノロジーを理由付けにして、デザイン性をより洗練させている。

 

 

スコープドッグのような、実用一点張りの兵器然とした野暮ったいフォルムも大好物であるが、やはりロボットはカッコイイほうが様になる。

 

とくに本作のように主人公やヒロインに大きく焦点が当たっている作品においては、なにより主人公機が特別仕様であるほうが、こちらも「よっ! 待ってました!」と言いやすいのである。

 

 

◆原作を読んでミタ。

 

はじめて『フルメタル・パニック!』を視聴したときに、一発でファンとなった当時のアニシエは、速攻で原作の小説をまとめ買いした。

 

これほどまでに面白いロボットアニメの、その原作とはいかなるものだろう、と楽しみに読んでみた。

 

感想としては『非常によくできた描写もあるが、とても拙い描写もある』作品だった。

 

どうにも、作者のそのときの気分がモロに反映されているような起伏の激しい文体だな、というのが読後の印象である。

 

面白くないわけではないが、そういった作者の『見えざる手』が、ときたまニュッと見えてしまうような、そんな場面が何度かある。

 

冒険活劇小説として、わくわく読める部分はあるし、なにより読みやすいのであっという間に全巻読破できるので、興味の湧いた方は一読することをおすすめします。

 

ちなみに番外編の短編(全9巻)は、学園コメディに特化した日常編である。

こちらは好みに合わせて、といったところです。本編の『長編シリーズ』でストーリーは完結しています。

 

◆『この人』が出ているから観る、でも良い。

 

アニシエは『渋いオッサン系の声優さん』が大好きである。

 

なんというか、美男美女だけでは場が締まらないじゃないですか。

 

というわけで、相良宗介の上司である歴戦の老兵アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニン役に大塚明夫さんが声を当てている、というだけでも個人的にはおすすめしたい作品である。

 

こんな上司がいる職場であれば、身も心も引き締まるという、そんな説得力を『声』で演じることができるというのは、ステキである。

 

 

さらに、主人公である相良宗介の因縁のライバルであるガウルン。

 

田中正彦さんの声とマッチして、ガウルンというキャラクターの悪どい享楽的な怖さがよくにじみ出ていて最高である。

 

卑劣であるが、自分の命にも執着しない、己の欲望に忠実である。生きるも死ぬも楽しんだ者が勝者である、というような、どこかしらに潔さを含んでいる悪役というのが、個人的に大好きである。

 

◆まとめ。

クオリティは問題なし。戦闘シーンの描き方も実戦を模倣した、地味だが現実感のある動きが様になっている。もちろんラブコメパートも楽しく見れる。

 

全体的なバランスは物凄く良い。かなり上質のアニメーションである。

 

難があるとすれば、ストーリー上で主人公機(アーバレスト)が出て来るタイミングが遅すぎる気がする。

 

もちろん、ロボットがメインである物語ではない、という前提があるのかもしれないが、それにしても、ちょっと遅くないだろうか?

 

だが、そうしないと最新鋭機である『M9』のスゴさが目立たない、ということもあるのだろう。

 

初見で観る限り、その遅さは気にならないほどストーリーが上手に進むので良いのだが、何度か繰り返し観ていると(さらにロボット戦闘を観たいときなど)少しもっさりとした感じを受けてしまう。

 

とは言え、これはアニシエの個人的な嗜好の問題であり、「あえて言えば」というレベルの話であって、アーバレストを早く登場させるために物語が整合性を破綻させてしまうようであれば、そんなことはしないで結構、こちらが我慢します、というくらいのものだ。

 

2018年現在、おそらく完結編となるであろうシリーズ4作目が放映中である。

 

アーバレストの後継機となる『レーバテイン』が映像で動く……それだけで往年のファンとしては感涙ものである。

 


記事内関連商品のご案内。

『フルメタル・パニック』Blue-rayボックス。

◆ロボットと学園コメディを絶妙なバランスで描く傑作。

 

原作ライトノベル『フルメタル・パニック』

◆原作第一巻。シリアスな本編シリーズと、コメディに特化した学園シリーズが刊行されています。