◆評価:★★★(45)
TITLE | D.C.III 〜ダ・カーポIII〜 |
DATA | 2013年 |
STORIES | 全13話 |
目次
◆あらすじ。
初音島。
春の景色がいつまでも続くこの島に一本の大きな桜の木があった。
それは枯れることのない桜の木――。
どんな願いでも叶えてくれると噂されたその不思議な桜は
初音島を象徴する存在だった。
しかしある日を境に普通の桜になってしまう。
風見学園公式新聞部と❝さくら❞を巡る
ちょっと甘くて、少し切ない春の香りの物語。
<ぽにきゃん-Anime PONY CANYON>より。
◆面白かったです。
最初に言っておくと、前作があまりにも、ありえない展開をしていったせいで本作を観るときに少し身構えていました。
今度は妖精さん(とか異星人とか)との共生について考える物語になってしまったらどうしよう……。
そんな言いようのない不安が頭をよぎる。だって前作の展開は明らかにおかしかった……でしょ?
詳しくは前作『D.C.Ⅱ ~ダ・カーポⅡ~』のレビューをご参照ください。久しぶりに「超展開とはこういうことだ!」という典型例を御覧いただける、よい機会になると思います。
とまあ、これくらい前作のおかげビビっていたわけですが、本作はとても面白く視聴できました。
◆CIRCUSだから曲芸ね。
「面白く視聴できた」のレベルを少し噛み砕いて説明すると、「よくあるエロゲ原作のアニメ化として、そのテンプレを遵守した安定性の高い作品」ということです。
そして今「よくあるエロゲ」と表記しましたが、発売当時は厳密に言うと「エロゲー」ではありませんでした。
先行販売されたのは全年齢対象版(※15歳以上推奨)である。この発表について一部の界隈(あまり詳しくは知りたくない界隈)では、いよいよ『ダ・カーポ』もエロスを捨てたか……と、嘆きの声が上がったようですが、さらに達観している賢者レベルの界隈(もっと知りたくない界隈)では「なるほど……つまり全年齢版を買わせた上で、エロプラスのレーティング版を発売するわけだな……やるなCIRCUS!(シャア風)」と、まことしやかに予言して、なんとこの予言が的中する。さすが賢者である。
というわけで2021年現在において、このアニメ作品を説明するときには晴れて「よくあるエロゲの~」と言って差し支えない状況となっている。
賢者たちの予言は、なにも根拠のないところから発生した現象ではない。
俗に言う「曲芸商法」という、原作ゲームを制作しているCIRCUS(サーカス)にちなんだ商品販売法が存在していて、賢者たちはここから推測していたのである。
詳しくは「曲芸商法」でググってもらえばよいとして、そもそも『ダ・カーポシリーズ』を観るときに「順番がよくわからない」という声を聞くが、その最たるものが原作ゲームの亜流乱造なのである。
たとえばまずCD-ROM版(初回版・通常版)を発売し、そのすぐ後に色々とオマケを付加したDVD-ROM版(初回版・通常版)を発売。ダメ押しにファンディスクやコンシューマ機移植版(全年齢版)を発売する。
そしてエピソードやキャラクターを小出しに追加していき、さらにそれらが上記のパターンを繰り返す。
とある有志による集計データによると『D.C.』とタイトルされたゲームだけで45パッケージ、『ダ・カーポII』で26パッケージ。これだけで71パッケージ存在する(※出典「ニコニコ大百科」)。
そりゃ混乱するわ……という数である。
逆説的に言えば、それだけ人気がありベストセラーとなった作品だとも言える。
◆まるで前作を反省したような作り。
原作ゲームを未プレイの人には、前作との繋がりなどがどうなっているのか、今ひとつ理解できない部分があると思われるので補足的に説明しておく。
まず大前提としてテレビアニメ版『D.C.Ⅱ』に対する続編ではない。更に言うと原作ゲームを忠実に再現した『Ⅲ』というわけでもない。
原作ゲームではシナリオが大きくふたつに分かれて構成されている。
『風見鶏編』と『初音島編』である。そして原作ゲームでは『風見鶏編』がメインストーリーであり、ボリュームもこちらのほうがはるかに多い。
TVアニメ版『D.C.Ⅲ』は舞台が「初音島」なので、原作ゲームでいうところの『初音島編』となるが、アニメ独自の展開を増やすことにより、原作では薄い『初音島編』のストーリーを大幅に追加している。
この追加に伴って(かどうかは知らないが)前作よりもお色気シーンが増量されている。
物語そのものについては、ミステリアスな謎が主軸に置かれつつ、各ヒロインとのイベントが1話づつ紹介されていくという、いわゆるテンプレ的に話が進んでいきます。
ヒロインたちは、それぞれの個性に合った可愛さがあり、安心してハーレム状況を楽しめる作りとなっている。
前作とは大違いで、すべてがテンプレートのとおりに進んでいく。
どうしたのだろう? すべてが前作と真逆に進行していく。つまり正常に物語が進展していくのである。
なんだかこれだけで評価しちゃいそうになるのですが、これが「普通」ですからね。
「すみません、これ前回のお詫びです」
という具合に増量されたお色気シーンがどんどんやってくる。
最初の不安はどこへやら、安心してニヤニヤ視聴できる安定感がありました。
『D.C.(第一作目)』と比較してしまうと、キャラ萌えアニメに転向したせいで、物語の重厚さが感じられない作りになってしまっているのが残念だが、最後までちゃんと観ていくと、さらに奥深い世界へと繋がっていることがわかってきます。
おそらく原作ゲームの『風見鶏編』に相当するストーリーが謎解きに大きく関わってくるのだろうけど、残念ながら本作ではそこまでのボリュームをまとめることはできなかった。1クールだからしょうがないところですね。
なににせよ、アニシエ的には次回作があるなら、ぜひ観たいと思える終わり方であった。
シリーズ3作目になってようやく「S.S.(セカンド・シーズン)」を観る気になったのに、2021年現在まで、続編が制作されるというニュースはまだ発表されていない(合掌)。
◆声優について。
今回みつけた「応援したい声優さん」はひとりだけ。
主人公、芳乃清隆(よしのきよたか)を演じた小野友樹さん。個人的に一番のはまり役は『ジョジョの奇妙な冒険ダイヤモンドは砕けない』の東方仗助ですね。
今後の活躍も期待しております。
◆総評。
お色気増量で、「誤魔化し先行逃げ切り作品」かと思っていたら、しっかりと物語が構成されていて、先を知りたくなる作りとなっていました。
ハーレム系アニメ(1クール版)の良いお手本でもある。
お色気に嫌味がなく、無駄な「クリーンさ」もない。お色気はお色気として、存分に楽しんで下さい、という姿勢がわかるので、こういうスッキリしている作品は安心してニヤニヤして観れますね。
……それにしても、なぜこのシリーズは2作目だけがあれだけヒドイ作品となってしまったのかが謎である。
本作は、きちんと世界設定を利用して、そこからさらに原点へと戻っていくという感じに話が進む。
1作目を知っていて、2作目のキャラを覚えていれば、ちゃんと楽しめるし、それを知らなくても(たぶん)本作だけで独立して観れるようにという配慮も感じられる作り方でした。
さらにすべての謎を解くことをせず、購買層への販促効果をきっちり視野に入れて演出されているところも程よい塩梅で、嫌味がないように作られているのも好感もてます。
買ってまで知りたい、とは思えないが(タイトル数の多さは前述した通り)何かの拍子に謎解き編(つまり「風見鶏編」)が知れる機会があったらいいかな、とは思いました。
『ダ・カーポ』の意味知ってる?
「ダ・カーポ」とはイタリア語で「はじめから」「頭から」という意味です。
「D.C.」という表記は演奏記号の表し方で、楽譜上で見かけたことのある人も多いと思います。
本作が原点へと回帰していくようなシーンで終わりを告げることによって、ようやくタイトルの意味が読み取れるという、奥の深い題名だったのに驚かされました。
根性入れて原作ゲームともども本作を楽しみたいという人には、面白い作品です。
変化球的な楽しみ方として、本作『Ⅲ』から→『Ⅰ』→『Ⅱ』の順でアニメを観ても面白いかもしれません。
一筋縄ではいかない長編シリーズを楽しみたい、という人にはオススメです。
アニシエはここまで視聴してきた3作でお腹いっぱいになりました(笑)。
余談。
アニメ制作会社のタグが「アクタス」となっていますが、放送当時の正式名義は「風見学園公式動画部」となっています。
なぜクレジット名義が違うのかは、まあたぶん「いろいろあった」んでしょう。
というわけでタグで検索する方もいらっしゃるかもしれないので、アクタスで統一させていただきます。
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◆シリーズ中で一番「お気楽に」観れる作品です。