◆評価:★★★(48)
TITLE | D.C. 〜ダ・カーポ〜 |
DATA | 2003年 |
STORIES | 全26話 |
目次
◆あらすじ。
年中花が咲いているという、不思議な桜が咲き誇る三日月型の島……それが初音島。風見学園に通う主人公・朝倉純一は、「他人の夢を“見させられてしまう”能力」と、魔法使いのおばあちゃんから教わった「和菓子を生み出すささいな魔法」を持っていた。
今日も寝ているあいだに誰かの夢を見てしまっているようだった。その夢の中には、なぜか幼なじみの少女が現れた。だが、妹の朝倉音夢に叩き起こされ、再び日常へと引きずり戻されてしまう。
正確には純一と音夢は、血がつながっていない兄妹。しかし本当の兄妹よりも絆は深い。まるで恋人であるかと錯覚してしまうほどに。
朝起きて風見学園に通う平凡な日常。同じく幼なじみで後輩の“わんこ”こと天枷美春、学園のアイドル白河ことり、学校の昼食になぜか“鍋”を食べる水越萌&眞子姉妹。
彼女たちとともに、今日も平穏な一日を過ごすはずだった。ところが、幼い頃に突然アメリカに引っ越したはずの芳乃さくらが現れた。驚く純一と音夢。そして最後にさくらはこう言うのだった。“幼い頃の約束を果たしに来た”と……。
※引用元『D.C. 〜ダ・カーポ〜』アニメ公式サイトより。
※上記サイトは閉鎖しました。
<「KING AMUSEMENT CREATIVE」公式チャンネル>より。
やたらと耳に残ってしまう神曲。
◆懐かしいの一語に尽きる。
今回、改めて再視聴してみた感想です。
原作ゲームもアニメもシリーズ化していきますが、本作はそんな『ダ・カーポシリーズ』の第1期作品です。
思えば、深夜アニメの「こっそり楽しむ、よくあるエロゲ原作のアニメ」として最初にアニシエが視聴していた作品が本作だったはずだ。
時代的にはこの辺りから、深夜アニメは意外性があって面白いと話題になっていき、ネットのインフラが整備されていくと同時に、その拡散力が大きくなっていったおかげで、現在では当たり前のようにアチコチのテレビ局で深夜アニメが常態化している。
そんな草分け的作品のひとつが本作だった。
◆初期作品だからこそ面白い。
当サイトでも「よくあるエロゲ原作のハーレムもの」作品については散々話してきた。
(※詳しくは『あかね色に染まる坂』のレビュー参照)
しかし、本作を今の時代に改めて視聴してみると、それほど「よくある」感じではないのが再発見できて面白かった。
細かく話していくと全26話中、前半まではいわゆる「よくあるエロゲの~」作品である。
しかし、後半部分になっていくにつれ、メインヒロインたちによる泥沼な愛憎劇が展開されていき、「よくある」どころか「エロゲ原作アニメ史上、一二を争う修羅場」をみることになる。
そこに描かれるタブーへの誘惑。
これぞまさに深夜アニメの醍醐味である!
というくらい凄まじい展開になっていきます。
これから本作を楽しみに視聴したいという人もいるかもしれないので、最初にお断りしておきますが、ここからはかなりネタバレした解説となっていきますのでご注意ください。
◆前半のお話。
物語の舞台は、桜が枯れることなく一年中咲いているという不思議な「初音島」。
それが魔法によるものだということを知っている人は少数であり、その知っている人たちにとって魔法は日常的なものであった。
主人公である純一は、この初音島の学園に通う高校生。わけあって義理の妹である音夢(ねむ)とふたりで暮らしている。
純一は祖母から教わった魔法が使える。しかしそれはささいな魔法で「手のひらから饅頭をだせる」というもの。そしてもうひとつ不思議な力があり、それは他人の夢を見てしまうという能力だった。しかも、その「夢」が誰のものなのかまではわからない。
両方ともなんとも中途半端な力である。
しかし、饅頭の魔法については、これが後に大きな伏線となっていくのは観ていてゾクゾクしてしまいました。
なぜゾクゾクするのか? それは観てのお楽しみである(意地悪)。
平穏な日々を暮らしていたある日、アメリカへ行っていた幼馴染である芳乃さくらが帰国する。
音夢と同じように純一を兄と慕っていたさくらの登場によって、三人の関係はゆっくりと、しかし確実に大きくうねりだしていく。
前半はその他のヒロイン(ゲームで言えば攻略可能なヒロインたち)にまつわるエピソードや、初音島の説明などがメインで、コメディタッチに進んでいきます。
この前半部分は間違いなく「よくあるエロゲの」作品スタイルである。
それと、本作は1話の中で本編と呼べるメインの話が前半の13分くらい。残りの半分は各ヒロインのキャラソンの時間となる。
各ヒロインのキャラソンは、じつに第8話まで続く。
さらにこの第8話、いきなりキャラ紹介にかこつけた総集編となる。
早くないかい?
それだけキャラを大事にしているということなのか?
ちなみに、その第8話以降の余った後半部分はイメージビデオ(エロい意味ではない)のようなサイドストーリーというオマケ映像になってしまう。
最初はだるいなあ、と思って観ているのだが、意外にクセになる不思議な映像でした。
うたまる(作中に登場する奇妙な猫)の完成形のような、大人のネコ(?)が登場する、ファンタジーな映像。これはまあ、一興として楽しめる人が観ればいいでしょう。
本編とは繋がりがないので、飛ばしてしまっても問題はない。
そして15話でまたしても総集編。
1作品で、しかも2クールで2度の総集編とは……。
他に膨らませるエピソードがなかったのだろうか。
こう言ってはなんですけど、正直言って、似たり寄ったりのエロゲ作品の中で、総集編など必要性がない。
しかも毎回本編は15分くらいしか進まいのだから、実質的に1クールの作品なわけである。
なんというか、これも時代性なのかもしれないんですが、確かにある時期に「中身は前半の15分で、残りの半分はよくわからないオマケ映像」で尺を稼ぐというスタイルが流行していましたね。
流行なのか、テレビ局やらスポンサーやらの以降なのかは存じませんが、とにかくそういう作風が出回っていた時期はありましたよね。なんだったんでしょう?
◆そして後半の話。
前半の明るさから一転して、シリアスなエピソードが多くなっていきます。
なぜ枯れない桜という不思議な現象が起きているのか? 桜の木の願い事とはなんなのか?
ヒロインたちがそれぞれ抱えている悩みや秘密に対しても、それをどう克服していくのかに焦点が当てられていきます。
優柔不断の極致にいる優柔不断の神と呼んでも差し支えないくらいヘタレな純一であるが、そんな彼の唯一良かったところは、わりと早い段階で本命の相手を選ぶところです。
問題の18話。
禁断の音夢とのキスシーンがあります。
かなり背徳的なシーンであり、言ってしまえば本作のクライマックである。
なのに……演出がかなりイケてない。
なぜか触れ合う唇にオーバーラップしてくる鈴のアップ。
鈴?
え……キスは?
そして画面が完全に鈴だけになる。
映像はその後、この鈴にズームインしていく。
演出の意図がわからない。奇妙に間の抜けたキスシーンとなる。
19話。
過激なネタバレですが、純一と音夢が合体します。
しかし、告白もエッチのOKサインもすべて音夢発信という。「どこまで受け身なんだよ主人公!」 と、頭をはたいてやりたくなります。
しかしまあ昔のエロゲなんてものは、だいたいこういう至れり尽くせりな仕様でしたね。懐かしいです。
20話。いよいよ修羅場
音夢とさくらの修羅場は、ドラマとしてかなり見応えのあるシーンとなっている。
そして何もできない純一のヘタレっぷりが際立つシーンでもある(彼の名誉のため、話の後半は多少しっかりとしてきます)。
ここまで意思表示されて、それに応えないようなら、本当にただのヘタレですからね。
22話 ようやく30分まるごと本編となる。
頼子の完結エピソード。頼子とは、純一の家にやってきた猫耳メイドであり、正体は猫である。元の飼い主の所へ戻っていってしまうわけだが、その前に純一にカレーのことや生活費のことを伝えていくシーンは、この作品で最も感動的なシーンである。
つまり本編のクライマックスは……とくに感動的ではないということだ(とんでもないネタバレ)。
23話 ことりの完結エピソード。
純一の同級生で、学園のアイドル的存在。もちろんハーレム候補のキャラである。
ことりには相手の心が読めてしまうという特殊能力があったのだが、その力が失われていくというエピソード。
彼女の読心術が消えるということに対しては、アニシエ的にはそれほど思い入れはない。
普通じゃね? という状態に戻るだけのことをなんでそんなに恐れているのか?
これまで煩わしいことも多かった能力なのに、いざ無くなるのは怖いというのは、まあ分からないではないかもしれないが、ちょっと大袈裟である。
普通に戻りたくないというのは、つまり選民意識でもあるんですか? と思っちゃいます。
心が読めなくなってはじめて、心を読みたい相手ができた。でも能力はもうないから、勇気を出して告白してみた。という、ちょっと切ない回でした。
そしてシーンとしてはカットしているが、ちゃんと純一がことりのことを振っていることが分かる描写があります。
ヘタレ返上である。
数々のハーレム候補を振り切って、物語はいよいよクライマックスへ。
純一は誰を選び、桜の木はどうなるのか? 修羅場の先にある幸せはあるのか?
続きが気になる人は、ぜひ視聴してみてください。
◆声優について。
「よくあるエロゲ原作の~」アニメにとって欠かせない(と、アニシエが勝手に思っている)名声優、田村ゆかりさん。今回はさくら役で登場ですが、とにかく「おませな幼女キャラ」を演じさせたらNo.1ですね。
ねっ!
あとは個人的に好きなのは松井菜桜子さん。ことりの姉であり教師でもある白河暦先生を演じています。
『ガンダムZZ』のルー・ルカと言った方が早いですね。
ねっ!
以上、ご贔屓声優さんを応援するぞ、のコーナーでした―。
◆総評。
繰り返しになるけれど、とにかく修羅場のシーンはすごい迫力です。
さくらが「音夢ちゃんだけはダメなんだからっ!」と言い、音夢は「さくらちゃんだけはイヤっ!」と悲痛に叫ぶ。
狂おしいほどの愛憎劇が好きな人にはオススメできる作品ですね。
平和でほのぼのしたハーレム・アニメを期待していると、手痛いしっぺ返しを喰らうので用心してください(笑)。
一世代前の作品なので多少絵が崩れている部分はあります。ただそれを上手に利用した画作りをしているので、それほどひどい崩壊として感じられずに最後まで観れました。
後半へ進むにつれ、絵面は安定していきます。
画力の体力温存という意味では、前半しか本編をやらないというスタイルはありなのかもしれないですね。……いや、やっぱ無しでお願いします。
しいていえばオープニングの最後の音夢の正面カット。あれがいちばん可愛くない音夢だな、と思うのはアニシエだけではないはずだ。
あ、言い忘れましたが、もちろんアニシエは「音夢派」です。
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◆この時代のアニメはけっこう尖っていたなあ……。
【PS2ソフト】D.C.P.S 〜ダ・カーポ〜 プラスシチューエーションソフト
◆原作はPCアダルトゲームなので、雰囲気を味わいたい方はこちらをどうぞ。ただしまだPS2を持っている方限定です(笑)