FILE:033 これが私の御主人様

評価:★★★(59)

TITLE これが私の御主人様(これがわたしのごしゅじんさま)
DATA 2005年

 

◆あらすじ。

思うところあって、家出をした沢渡いずみとその妹のみつき。アルバイトを探そうにも何処へ行っても断られ街中をさまよっていた。

そんな時二人は、ある屋敷で「住み込みの家政婦募集」との張紙を見つける。
その募集は、事故で両親を失い莫大な遺産を相続するものの、天涯孤独の身となった中林義貴が行ったものだった。

彼の身の上に同情しながらも、妹のみつきと家政婦として働こうと考えるいずみ。
しかし、なんと義貴の本性はひねた性格の制服フェチという筋金入りの変態だったのである!!エッチなメイド服を着せられてキレる姉のいずみ、喜ぶ妹のみつき。

早くも御主人様気取りで増長する義貴に、美少女大好きなペットのワニまで加わって・・・

 

※引用元『これが私の御主人様』公式サイト

 

◆香港では18禁です(※原作コミックの話)。

コンサバティブ(中庸)な作品をつくることを是としないGAINAXと、常にアニメーション製作の先端を進んでいるSHAFTの共同制作。

 

スラップスティックなコメディとしては王道の展開であり、ギャグとちょっとHなサービスシーンの塩梅も、よく計算されているという印象を受けた。

 

ギャグもお色気も、しつこすぎない味付けとなっている。

 

アニメやイラスト、コスプレ、さらにはアダルトビデオにおいても、ちょっとエッチな感じのメイド衣装が描かれたり、着たりされているが、その源流のひとつが本作であることは間違いない。

 

言葉が乱暴になってしまうけど、本作を(あくまで好意的な)一言であらわすと、

「思い切り極端に振り切ったB級コメディ」である。

 

 

◆どこがどう振り切っているのか?

テンポが早いストーリー展開なので、なんとなく勢いで作られているように見えるが、前述したように、コメディとしての要素を細かく計算して配分されている作品である。

 

本来、こういった作り方をしている作品というのは(良くも悪くも)全体的にまとまった印象を視聴者に与えてしまい、総評として「小さくまとまっている作品」という評価がつけられることが多い。

しかし、そこに勢いを加味する要素として、主人公以外のキャラクターについては徹底的に個性を突出させて、そこから派生する極端なトラブルへと向かわせるという手法がとられている。

 

ちなみに本作における主人公はメイン・ヒロインである沢渡いずみである。

 

え? 莫大な資産を受け継いで、やりたい放題している変態少年・中林義貴(なかばやしよしたか)ではないの?

という声も出てくるだろうが、本作の主人公が義貴であったなら、そもそもアニメのタイトルが

『これが俺様のメイド達』

というような、ご主人様目線のタイトルになるはずである。

 

本作はあくまで『私』、つまりメイドである誰かの視点によって描かれる物語であって、唯一、常識的な判断力と行動力を備えている沢渡いずみの物語であるということが成り立つのである。

 

屈折した富豪の変態少年、義貴。

可愛い容姿とは正反対の腹黒い精神の持ち主である妹の沢渡みつき。

正統派美少女という表の顔と、同性愛に目覚めて、いずみを追い求める狂気の愛情を抱いた3人目のメイド、倉内安奈(くらうちあんな)。

 

いずみは、彼らの常軌を逸した言動に左右されながらも、莫大な借金を返済するために日々働き続けるのである。

 

ギャグアニメであるからこそ、性格に偏りがあるキャラクターを容赦なく振り切って使用する。

 

そのハチャメチャな展開が突き抜けた面白さへと繋がっていくのではないだろうか。

 

◆出るべくして出た作品。メイドの源流とは。

今でこそカテゴリーとして定着している『メイド』あるいは『メイドもの』というワードは、いったいいつから使われているのだろうか?

 

秋葉原において、メイド姿の店員さんがにょきにょきと路上に出現しはじめ、それが当たり前の風景となってしまった現代。この時点を海原に接する長大な幅をもつ大河の下流だとすれば、その源泉となるべき水源は、とてもつもなくピンポイントな湧き水にまでさかのぼることができる。

 

アニシエが辿れた、その源泉とは……

 

やはりPCアダルトゲームであった。

 

「やっぱりね」という感じではあるが、日本で初めて(つまり世界初の)ヒロインがすべてメイドという設定のゲーム『殻の中の小鳥(からのなかのことり)』が発売されたのが1996年。

 

さらに続編である『雛鳥の囀(ひなどりのさえずり)』が翌年1997年に発売される。

 

『殻の中の小鳥』において、メイドという存在の下地がオタク界隈に広がり、二作目である『雛鳥の囀』でメイドブームに一気に火がついた。

 

さらに同時期に発売された『Piaキャロットへようこそ!!(1996年発売)』というエロゲーが、このブームに拍車をかけることになる。

 

『Piaキャロットへようこそ!!』の舞台は架空のファミレスである。ヒロインたちが着るお店の制服が女性コスプレイヤーの間でブームとなり『コスプレ』という単語そのものが一般的に通じるほどの認知度を得るほどになっていった。

 

にわかに活気づくコスプレ業界の動向を敏感に察知した秋葉原地区では、早々にコスプレをした店員が給仕してくれるお店……『コスプレ喫茶』を開店させていく。

 

これはあくまで常設の店舗としての記録である。

 

前述した『Piaキャロットへようこそ!!』の人気に応えて、ゲーム内のファミレスを模して作られたイベントブースでの出店は何度かあったようである。

 

定期的に行われていた、このイベントがいよいよ常設化されたのが2000年。『カフェ・ド・コスパ』という店が最初のようである。

 

常設のコスプレ喫茶が誕生してから、メイド喫茶が産声を上げるのは、文字通りあっという間であった。
2001年。ネットで確認できる最初の元祖メイド喫茶は『CURE MAID CAFÉ(キュアメイドカフェ)』である。

 

ここまでくると話は冒頭へと戻る。

 

そう、現代の秋葉原では当たり前の光景となったメイドやら、忍者やらのコスプレをした女の子がビラを配ったり、客引きのために大量発生している状態である。

 

そして本作の原作であるコミックが連載開始したのは2002年。

 

まさに時流に乗って、満を持して誕生するべくして生まれてきた作品なのである。

 

 

◆総評。妹みつきの腹黒さを許容できるか?

想像していたよりも面白いアニメだった。

 

スラップスティック・コメディの王道であり、お色気シーンの挿入タイミングと頻度も絶妙。

 

きちんと計算されている展開というものは、観ていて気持ちがいいものだ。

 

キャラクターの可愛さは静止画として知っていたが、どのキャラも生き生きと描かれている。

 

義貴の外道さは、中二病を患っているいう観点からは、その軸をぶらさない。

 

ヒロインであるいずみの気の強さは姉という立場から、同じく最後までぶれることなく個性を維持し続けている。それでも垣間見える性格上の弱さや脆さも、ちゃんと伏線を張っての描き方がされているため、より一層可愛らしさが引き立ってくる。

 

作品を作る以上「当たり前だ」と言われるような要素ではあるが、世の中には本当にヒドイ作品が溢れかえっているわけで、こういった基準値としてのコメディに当たるだけでもラッキーだと言わざる得ないのが現状である。

 

義貴の外道っぷりは「まあ、もう、変態だからしょうがないよな」と諦めて観ることができるが、あとはいずみの妹であるみつきの、その腹黒さを人として許容できるか? という部分で視聴の分かれ目があるような気もする。

 

アニシエは、コメディであればどんな展開であろうと最後に笑えればそれでいい、と思えるタイプなのだが、みつきの腹黒さに引いてしまう人もけっこういるようである。

 

確かに2019年現在、肉親であろうと無許可で誰かの画像をアップすることはモラルに反することとして、バッシングの対象になるのだが(作中では、みつきが日課のように姉のきわどい画像をアップしている)、この作品が放送されていた時代では、まだそこまでSNSインフラが(倫理も含めて)整ってはいなかった。

 

まあ、それでももちろん盗撮画像をアップすることは違法行為に当たるのだが、コメディの範疇においては、それほど目くじらを立てるようなものでもなかった時勢なのは確かである。

 

加えてアニシエ的な洞察を追加させてもらうならば、みつきの、いずみに対する数々の嫌がらせ(と捉えることのできる出来事)は、姉を慕う心と同じレベルでの嫉妬心なのではないか? とも受け取れる。

 

学園に親衛隊がいるほど人気もあり、あらゆる面で自分のほうが優れていると思っている妹みつき。しかし、なぜかいつも人の輪の中心にいるのは姉である。

 

すべて姉よりも優れているのに、どうして自分は姉の付属品のようなポジションになってしまうのか……といった一種のルサンチマン(妬み)が、彼女を腹黒い行動へ駆り立てている原因なのだとしたら、それは屈折した愛情表現ととれなくもない。

 

ともあれ、そこまで深読みする必要もないほどドタバタと過ぎていく本作は、きっちり作られているコメディとして及第点の面白さを持っている。多少のブラック要素はあるが、コメディを楽しみたいという人には受け入れられるのではないだろうか。

三度の飯より萌え美少女が好きだ、という人にはオススメの1本である。

 

 

 


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