FILE:028 機動戦士ガンダム 第08MS小隊

評価:★★★★(75)

TITLE

機動戦士ガンダム 第08MS小隊

(きどうせんしガンダム だいゼロハチエムエスしょうたい)

DATA 1996年

 

◆あらすじ。

 宇宙世紀0079年10月。地球連邦軍所属の一隻の輸送艇が、地球に向かって移動していた。その船には地上部隊への配属となった連邦軍兵士が乗船しており、若手士官のシロー・アマダ少尉もその一人だった。窓の外に、地球の美しい姿が広がり始めたとき、輸送船の兵士達はモビルスーツ同士の戦闘を目撃する。被弾し、弾薬も尽きた友軍のジムに迫る、改良型のザク。顔も知らぬ仲間の危機的状況を見たシローは、輸送船に積まれていたボールで応援に向かう。そして、捨て身の戦法でジムを救い、ザクと同士討ちとなったボールから脱出したシローは、同じく機体を失ったジオンの女性パイロットと出会うのだった。彼女の名は、アイナ・サハリン。残骸となった艦船に取り付いた二人は、敵と味方という関係を越え、協力して共に生きて帰ることを誓う。この出会いが、彼らの運命を大きく変えるとも知らず、シローとアイナは、生き残るための「二人だけの戦争」を始めるのだった……。

 

※引用元『機動戦士ガンダム第08MS小隊』公式サイト

 

◆『純愛』を主軸においた珍しいガンダム作品。

作品タイトルの略称は色々あるが、もっとも一般的になじみがあるのは『ゼロハチ』だろう。続けて『ゼロハチ小隊』とも言うし、とにかく『08』がどこかに入っていれば、本作の略称だと思って間違いない。

 

OVAとして制作されたのは『スターダスト・メモリー』より後であるが、話の内容としては『ファーストガンダム』と同じ一年戦争時代を舞台としている。

 

少しマニアックな解説を入れると、

 

宇宙世紀(UC)0079年の10月上旬(ガルマ・ザビ国葬)辺りから、

11月中旬以降(オデッサ作戦終了後)までの期間において、

地球上の東南アジア方面を中心とした地上戦がメインとなる物語である。

 

同時期に存在しているアムロやシャアなどの主要人物との接点はまったくない(関連のある場所へ直接的に赴くことがないのだから当然ではあるが)完全なるオリジナル・サイドストーリーである。

 

また、主人公であるシロー・アマダとヒロインであるアイナ・サハリンの純愛を前面に押し出してのストーリー展開などは、これまでの『ガンダム・シリーズ』とは異なる視点からのアプローチでもある。

 

 

シリーズ通して、ガンダムの主人公には『悲恋』がつきまとう宿命を負わされているが、本作では厳しい現実に立ち向かい、その愛を貫き通すことが事態の収束にもつながるという、よくできた構成となっている(いささか極端な結末ではあるが、個人的には許容範囲)。ちなみに歴代のヒロインの末路をここに箇条書きしておこう。

 

作品名 ヒロイン名 結末
機動戦士ガンダム ララア・スン 戦死
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 クリスティーナ・マッケンジー 負傷・転属
機動戦士ガンダム STARDUST MEMORY ニナ・パープルトン ひどい裏切り
機動戦士Zガンダム フォウ・ムラサメ 戦死
機動戦士ZZガンダム 該当ヒロインなし 判定不能
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア チェーン・アギ&クエス・パラヤ 戦死
機動戦士ガンダム UC ミネバ・ザビ 生存
機動戦士ガンダムF91 ベラ・ロナ 生存

※ZZガンダムのヒロインは多数いるが全員立ち位置が微妙なため(ロリだったりどっちつかずだったりで)該当者なしとしました。

※宇宙世紀シリーズで時代的に繋がりの深いものに限定しています。

 

 

純粋なハッピーエンドを迎えるヒロインはベラ・ロナぐらいであろうか。UCのミネバは最終回があやふやだったので、続編である『機動戦士ガンダムNT』を視聴してみての結論となりそうです(まだ観てない:涙目)

 

 

本作の最終決戦において、主人公であるシローはかなりの深手を負ってしまうのだが、すべてを背負って生きていこうと決めた二人の先には、絶望ではなく希望の光が一筋だけ輝いている、という終わり方に、これまでのガンダムにおける戦争の暗い側面だけではなく、敵味方が共に手をとってわかり会える(たとえそれがニュータイプという特殊な人間ではなくとも)というポジティブな幕引きとなっている。

 

 

言うなれば、ガンダム版ロミオとジュリエットというのが本作を表すのに最も相応しいワン・フレーズだろう。

 

◆元祖「倍返しだ!」

 

2013年。ある日を境にして急激に「倍返しだ!」というフレーズが大流行した。

日本国民の大半が、このフレーズはその年に放映されて大ブレイクしたドラマ『半沢直樹』のセリフだということを知っているだろう。

 

しかし、日本のドラマをほとんど観ないアニシエは、当時この流行を「ついに08小隊が大衆の支持を得たのか!」と狂喜乱舞していた。

 

 

そう、堺雅人よりも先に「倍返しだ!」を名セリフにしたのは何を隠そう本作であり、シロー・アマダなのだ。

 

 

と、言っても大半の人にはまったく意味が通じない話なので、アニシエが「倍返しだ!」と言ったところで「半沢直樹? もう古くね?」と言われてしまうのである。

 

 

いや、そこからさらに15年以上も昔のセリフなんだがな!

 

 

さらに言えば「半沢直樹のセリフだよ」と言われるたびに「そうか、その半沢直樹というドラマはきっとガンダムネタを随所に盛り込んだマニアックなドラマに違いない」と勝手な深読みをして視聴するも、まったくぜんぜん関係ないことが判明し、しかしドラマはけっこう面白かったのでなんともやるせない気持ちになったのは内緒である。

 

◆後半の戦闘シーンは圧巻!

 

本作の見所は、なんといってもモビルスーツを含めたメカニックの全体的なリアリズムの追求にあると言えるだろう。

主役機からしてガンダムではあるものの、先行量産型という廉価版で、仕様も陸戦に限定されている(物語後半で主人公機だけ大破したために現地改修型である『Ez-8』という機体になる)『ファースト・ガンダム』のように、ひとつの機体だけがずば抜けた性能を誇るというものではなく、あくまで数ある兵器群の中のひとつ、という地位に留まっている。

 

新米小隊長であるシロー・アマダは、どちらかというと熱血属性であり、それに振り回される愚連隊のような隊員たちとの交流を描く青春ドラマ風味のキャラクター物語とは裏腹に、戦闘シーンやメカニカルな描写には戦場の空気感が漂うほどのリアリズムに溢れている。

 

スクラップ寸前のザク3機が準ヒロインであるキキの村へ乗り込んできたときの、今にも壊れそうなモビルスーツの駆動音や、ジムのシールドを奪って転用している様などは、激しい戦場をくぐり抜けてきたのだろう、という視聴者側の推測をよりリアルなものとして受け入れられるように見事な味付けをしてくれている。

 

そしてなにより本作を有名にしたのはクライマックスでのノリス・パッカードが駆るグフ・カスタムによる鬼神のごとき戦闘シーンであろう。

 

俗に言うグフカス無双である。

 

物語序盤では単なるアイナの護衛をしている堅苦しい軍人さん、という程度の存在であったのだが、その律儀な忠誠心と、幼い頃から見守っていたアイナへの父性を伴った愛情の念が相まって、今生の別れとなる出撃シーンは今なお胸にグッとくる名シーンとなっている。

 

グフ・カスタムに乗る前までは、よくいるヤラレキャラかと思いきや、たった1機でシロー率いる08小隊を手玉に取る鮮やかな戦い方は、サンダース軍曹が思わず口にしたとおり、間違いなくエース級の腕前である。

 

極端なファンからは「グフカス無双のみの作品」と揶揄されるほど、この戦闘シーンは目を見張るものがある。確かにこれだけであっても観る価値があると言えるほどの、ガンダム名勝負のひとつではあるが、やはりそこに含まれる、敵味方の個性豊かなキャラクター関係を知った上で観たほうが、より楽しめることは言うまでもない。

 

とはいえ、アニシエもグフカス無双が無性に観たくなって、戸棚からDVDを引っ張り出すことはしょっちゅうある。

 

そして、これを観るたびに『戦場の絆』でグフカスを使いたくなってゲーセンへ足を運ぶという人も、けっしてアニシエだけではないはずだ。

 

◆玄人好みの声優陣が熱演。

 

まず最初にイーサン・ライヤー大佐(腹黒な連隊長)およびジタン・ニッカード(補給体の酒好き不良老人)を演じた永井一郎氏と、厳格な兵士であるノリス・パッカード役の市川治氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

永井さんが声を当てた作品の多くは時代を超えて受け継がれる(あるいは楽しませてくれる)ものがほとんどであり、それはまさに声優という職業冥利に尽きるものではあるのでしょうが、やはりこれからの作品でその声が聞けなくなるのは寂しいものですね。

 

とはいえ、声優人口は年々増え続けているわけですから、これからのアニメを代表するような渋い声優さんもたくさん出てくることでしょう。

 

温故知新。今後も味のあるキャラを怪演される声優さんが続々と世に出てくることを楽しみにアニメを観ていきましょう。

 

とりわけ、この08小隊では、じつにアニシエ好みの声優さんが多数出演されています。
サンダース軍曹(玄田哲章)、エレドア伍長(藤原啓治)、ギニアス・サハリン(速水奨)と、それぞれについて書いていくとページがいくつあっても足りないような人ばかりです。

 

とくにカレン曹長を演じた小山茉美さんの凛とした声は素晴らしいですね。とてもアラレちゃんやコロ助とは思えない幅の広い声優さんです。

 

『ブラック・ラグーン』のロシアン・マフィアであるバラライカ役でも、ものすごい存在感を発揮してますが、その話はまた『ブラック・ラグーン』のレビューのときに話しましょう。

 

チョイ役ではありますが松井菜桜子さんもチラっと声を当てています。

 

『機動戦士ZZガンダム』のルー・ルカと言えば皆さんご存知でしょう。

 

え? 覚えていない? ……そうするとマニアックなところで『名探偵コナン』の鈴木園子役でしょうかねえ……皆さん誰も知らないと思いますが(確信犯)

 

さらにガンダムつながりで言えば、ちゃんと(?)榊原良子さんもゲスト的に出演しています。

 

ハマーン・カーン、『風の谷のナウシカ』のクシャナなど、女王の風格がある榊原さん演じるジオンの女部隊長トップ(←名前である)を演じてます。

 

やはり、どことなく高貴な心を持った隊長さんではあるが、粗野な部下のせいで命を落としてしまうという不運なキャラクターである。

 

どうでもいいくらい、かなりマニアックなことを言うと女隊長のトップ、その下の優しい隊員デル、そして粗野な新入り隊員アス、という3人の名前は『伝説巨神イデオン』に登場する古代語に由来する。

 

あと、ほとんどモブキャラでの登場ではあるが、山崎たくみさんがチラホラと声を当てている部分があるので、好きな方は探してみてください。

 

◆先行量産型というつじつまは合っているのか?

 

メカの描写も、キャラクター設定も、そして純愛を主軸においたストーリー進行においても、かなり見応えのある、満足のいく仕上がりになってはいるのだが、そもそもの設定考証として幾つかの疑問が頭をよぎる。

 

まず、第1話において、サンダース軍曹が搭乗していたジムである。

 

ガルマ・ザビが戦死して、その国葬をギレン・ザビが取り仕切っている時期というのは『ファースト・ガンダム』ではまだジムが登場する前の出来事である。

 

一応、サンライズの公式見解としては、宇宙にある工場で組み立てられた(最初期の)機体であり、ファーストのときには戦闘エリアの違いから、たまたま登場しなかった……という設定を公表しているのだが、これはさすがにちょっと苦笑してしまう。

 

しかしまあ、陸戦型ガンダムと陸戦型ジム同様に、局地的に先行配備された機体だと言うのであれば、それはもうそのまま受け止めるしかないし、なによりカッコイイから大概のことには目をつぶってしまうガノタな自分がいるのは否めない。

 

さらにゴリ押しして考証を進めていくと、

 

  1. これら先行量産型がオデッサ作戦へと投入され、その結果として連邦軍の勝利となったとする。
  2. その戦場において一部のジオン将校が目撃した連邦軍のモビルスーツ(ファースト・ガンダムを含む)に対してかなりの危機感を抱くことになる。
  3. そこでシャア率いるマッドアングラー隊が、連邦軍の拠点であるジャブローへと侵入し、ジムの所在とデータ、及び破壊工作を実施するに至る。

 

……という筋書きであれば一応の筋が通ってくるのである。

 

◆まとめ。ガンダムシリーズの楽しみ方。

 

今回の連邦軍のモビルスーツがフライングして登場するといった、言わば後付のような設定がガンダムにはけっこうある。

 

シリーズの中には、たまにとんでもないほどのオーパーツ的なオーバーテクノロジーを駆使しした機体が出てきたりするのだが(たぶんこれからもどんどん出てくるだろうが)、それらを瞬時に脳内補完して自分なりの整合性を確立させる。

 

これこそがガンダム・サーガを楽しむのに必要な技能なのかもしれない。

 

また、そういうことをほぼ無意識のうちに行える人というのが、ガンダムファンというものなのかもしれないな、とこれを書いていてふと思いました。

皆様はいかがでしょうか?

 

 

 


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