FILE:017 LUPIN the Third ~峰不二子という女~

評価:★★★★(75)

TITLE

LUPIN the Third ~峰不二子という女~

(ルパン・ザ・サード~みねふじこというおんな~)

DATA 2012年

 

◆あらすじ。

フロイライン・オイレ島。その孤島には、あるカルト教団が住みつく。
ルパン三世は教祖フラフラ様が隠し持つ秘宝「フラフラの灰」を狙い、島に侵入していた。
そこでルパンは美しくも危険な女と出会う。その女の名は峰不二子…。フラフラ様の花嫁として近づき、同じく秘宝を狙っている謎多き女怪盗だ。お宝を巡り峰不二子とルパン三世の危なすぎる戦いが今、幕を開ける!

※引用元『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』公式サイト

 

 

◆40周年記念作品。

 

正確には、ルパン三世のTV版第一シリーズの放送開始から数えて40周年の記念作品である。

 

なんと、連続TVシリーズとしては27年ぶりだそうです。

 

思わず驚いてしまいますね。

 

今ではすっかり『ルパン声優』として確固たる地位を築き上げた栗田貫一さんにしても、さらに驚くべきことに連続TVシリーズでのアフレコは初めてのことだそうである。

 

ますますビックリである

 

年に一本くらいのペースで、毎年ルパン三世のテレビスペシャルが放映されているもんだから、栗田さんもどこかで連続シリーズを担当しているものだとばかり思っていたが、単なる思い込みだったということだ。

 

なんというか(アラフォー世代ならしみじみ共感してくれると思いますが)刻の経つのは本当に早いものですねえ……しみじみ。

 

 

◆シリアスな世界設定は大人向け。

 

『ルパン一味』が結成される前の過去を紡ぐ物語。

 

レトロ調の中に幻想的な色彩を織り交ぜ、過去の世界であることが強調される印象的な画作りや、桃井かおりの語り調ではじまるオープニングなど、挑戦的な要素を多分に含んでいる意欲作でもある。

 

深夜枠でのアニメ(これもルパンでは初)ということもあってか、官能的な描写も遠慮なく挿入されている。

 

原作のマンガを読んだことがある、という人が世間にどれだけいるかよく分からないので注釈的に書いておくと、本作『峰不二子という女』は、より原作に忠実な世界観で構成されているルパン作品なのである。

マンガ版のルパンでも第一話からいきなり性描写が描かれていたりする。

 

マンガというものは子供向け、という認識が世間の大半を占めていた時代に、大人向けのコミックを描きたかった、というのが原作者モンキー・パンチの発想である。

 

ルパン自身も、コミカルな三枚目として描かれてはいるものの、「ふざけたヤツだが油断ならない人物」という深みのあるキャラクター像として登場している。

 

それと、(さらに)まったくの余談であるが、原作漫画のルパンの初期絵柄では、ルパンと銭形警部が見分けがつかないほど酷似している。

 

たまに「これ、ルパンが変装してるんだよねえ?」と錯覚してしまうくらいである、というのはちょっとした笑い話として。

 

◆娯楽作品としての『ルパン』ではない。

 

近頃では『名探偵コナン』と共演するなど、子供から大人まで楽しめる映画の代表作となりつつある『ルパンシリーズ』であるが、本作ではこういった娯楽的要素を排した上で、大人が楽しむミステリアスな作品であることを意識して作られている。

 

宮崎駿監督の『カリオストロの城』とは、まさに対極をなすような物語として仕上がっている。

 

◆海外ミステリーのようなストーリー展開。

 

物語は前半のゆるやかな一話完結のエピソードが、それぞれ複雑に絡まりあっていき、最後にそれらの伏線がピリリと効いてくる。

 

まったく関係ないと思っていた話が、最後の方で重要な意味を持ってきたりする演出技法は、海外のミステリードラマのようで、観ている者を飽きさせない工夫がしっかりなされている。

 

過去の上書き、物語を監視する組織、謎の幻覚剤に対する明確な回答。

 

すっきりとすべてを収めて、コンパクトに刺激的なコンテツを作り出している本作は、かなりの良作と言っていいだろう。

 

 

◆声優について。

 

峰不二子役の沢城みゆきさんは数えて四代目の峰不二子である。

※三代目とする意見もあるが『峰不二子を担当したことのある声優として年代順に数えた場合』は四代目である。

 

アニシエの世代では二代目の増山江威子(ますやまえいこ)さんが馴染み深いのだが、新・峰不二子である沢城みゆきさんの声質も素敵である。

 

 

『色気』というか『艶っぽさ』で言えば、やはり聞き慣れている増山江威子さんの声に軍配があがるかもしれないが、沢城みゆきさんが演じる峰不二子には『色香』よりも女性としての『気高さ』、あるいは『タフネス』さがよく表現されていると感じられる。

 

若かりし頃の峰不二子という意味では、かなりハマっているキャスティングではないだろうか。

 

山寺宏一さん演じる銭形警部も、原作に沿っているキャラクターを見事に演じきっている。

 

本作の銭形警部は、原作よりもさらにダーティなヒールとして描かれている。

 

峰不二子の色仕掛けに応じるシーンなどは、ちょっとしたショッキング映像である。

 

狡猾な大人の駆け引きが繰り広げられる本作は、決して子供が楽しむために作っている作品ではないということを暗に示している。

 

個人的に大好きな声優であるチョーさんも一話目のゲストとして登場している。

 

ゲストキャラだから、出オチでおしまいかな……と思いきや、このエピソードがあとあとまで続く長大な伏線のひとつとなっている。

 

ちなみに本作は各エピソードごとにゲストキャラクターとして様々な声優さんが登場する。

声優ファンの人にもオススメの一作である。

 

◆総評。

ルパン三世が好きな人は観るべし。

作画と音楽、それに構成についても、とても意欲的な作品ではあるが、一度観てしまうと話がすべて理解できてしまう。

 

それはそれでアニメ作品としては素晴らしいことではあるが、二度三度と噛み締めて楽しむ要素というものが、あまり無いように感じられた。

 

一度観れば充分ではある作品ではあるが、アニメ好き&ルパン好きな大人であれば必ず観ておくべき作品でもある。

 

追記の追悼。(※2019年6月9日:加筆)

原作者であるモンキー・パンチ氏が2019年4月11日に死去された。

 

大ベテランでありながら、いち早くペンタブレットなどのデジタル・ツールをマンガの表現手法として積極的に取り入れ、デジタルマンガ協会の設立に多大なる貢献された方である。

 

まさに生涯を通じて業界のパイオニア的存在であった。

 

代表作である『ルパン三世』は、アニメとの相乗効果と相まって、日本国民ならその名を知らぬ者はいないほどの作品となった。

 

TV版、劇場版を問わず、つねに視聴者を楽しませてくれる作品を生み出された、巨匠のご冥福を心よりお祈り申し上げる。

 


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